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RAINY
〜後編〜

作:いちろう

 

 

 「そうか・・・小宮山の所が・・・」

 二つの爆発事件から二時間後・・・二人は近くの喫茶店に入っていた。窓の外では今も救急車や消防車が走り回っている。

 『今日の夕方、福岡市内の福岡県立病院と交通センタービルが爆発しました。福岡県立病院では医師らを含む100人以上の死亡者、150人以上の重軽傷者が出ています。交通センタービルでは今でも引き続き救助活動が進んでおり、現在までに52人の死亡者、70人以上の重軽傷者が出ています。福岡県警では二つの爆破火災事件は事故と事件の両面から捜査を進めています。この時間は引き続き・・・・』

 店内のテレビも事件の報道が続いている。

 「それで・・・どうしてここまで出てきたんだ?」

 前田がコーヒーを飲みながら聞いた。

 「ああ・・・事件のことが気になってな。昨日の緊急対策会議で福岡県警の田村って人から誠司の話を聞いたんだ。」

 「田村さんか・・・」

 前田はコーヒーカップの中のコーヒーを見つめた。『そういえば田村さんは何をしているのだろうか・・・』

 「それにしてもどうなってるんだ!性転換事件の後は爆破事件・・・これじゃパニックにならないほうが不思議だぞ・・・」

 「そうだ!賢治、こいつを見たことないか?」

 前田はそう言うと封筒の中から一枚の写真を取り出した。そこにはあの黒い生物が映っている。

 「なんだ・・・これ?新種のミジンコか?」

 鈴木も首をひねった。

 「ミジンコじゃねーよ。原子の二倍の大きさで、事件の日の雨と性転換者の血液から採取された生物だ。しかも・・・」

 前田は小宮山が言っていたことを全て話した。

 「なるほど・・・小宮山がそんなことを・・・」

 「なんか、後の全てを俺に任したみたいでさ。どうしたらいいかわからないんだよ。」

 「まあ、後は専門家のお前に任せたって事じゃないの?」

 「あーあ・・・なんでこんなことになるなぁ〜・・・」

 前田はポツリとつぶやく。

 「そうだよな・・・小笠原の葬儀もどうなったんだろ?大体俺は葬儀で来るはずだったのに・・・」

 「ん・・・小笠原?」

 「どうした?」

 その時、前田の頭に一つの考えが浮かんだ。

 「小笠原も爆発事件だったよな・・・・」

 「そ、そういえば・・・・」

 「しかも性転換事件の前日・・・なんか関連がありそうじゃないか?」

 「確かに・・・!」

 「行ってみるか?沖縄。」

 「ああ・・・」

 二人はそう決めるとすぐに喫茶店を後にした。

 しかし二人は気づいていなかった・・・喫茶店内で二人に視線を送る怪しい男の事を・・・

 

 

 那覇空港

 二人は夜の七時に沖縄の地に降り立った。夏が近いせいか空はまだうっすらと明るい。

 二人はそうゆっくりしていられないということですぐに那覇国立生物学研究所に向かった。研究所・・・といっても爆発事故があったため現在はがれきの山である。

 「うっわぁ〜・・・こりゃひどいな・・・」

 鈴木ががれきの山を見て声をあげた。

 「近くに何もなかったからこれぐらいで済んだんだろ・・・民家があったら大惨事だぞ・・・」

 たしかに近くに民家は少ない。

 「で、何を調べるんだ?」

 鈴木はがれきの一部を拾い上げた。

 「俺たちは警察じゃないからな・・・生き残った人がいるって聞いてるからその人に話を聞こう・・・」

 「聞こうって言ってもなあ・・・どこにいるんだ?」

 「それがわかれば苦労しないよ・・・」

 前田が時計を見ると、時刻はすでに八時をまわっていた。空はほとんど闇に包まれている。

 「さすがにもう遅いか・・・どこかのホテルにでも行くか?」

 「そうだな・・・」

 そう言うと二人はバス停に引き返した。

 

 

 「はぁ〜・・・やっぱり久々のベッドは気持ちいいな!」

 前田は空港前のホテルに着くと、すぐにベッドに倒れこんだ。

 「だよな・・・職業柄、俺たちは研究所に閉じこもってるからな・・・」

 鈴木はそう言いながらテレビをつける。

 『・・・身元の確認を急いでいます。繰り返します、今日午後五時ごろ、福岡市内にある福岡県立病院と駅前の交通センタービルで爆破火災事件がありました。これまでに入ってきている情報によれば、二つの事件であわせて230人以上の死亡者、500人以上の重軽傷者が出ています。現在も自衛隊などが救助活動を続けています。福岡県警では・・・』

 「なぁ、他のチャンネルにしてくれないか?」

 前田がもう散々、という感じで言った。前田としては現場を見ているので当然であろう。もっとも、鈴木も現場を見ているのだが・・・。

 「他のチャンネルっていってもなぁ・・・」

 鈴木はチャンネルを変えるがこんな事件が起きたのだ、どの番組も特別番組をやっている。

 「もう、いいよ。ところでそっちの方で何かわかっていることはないのか?」

 「そうだな・・・」

 鈴木はテレビを消すと、ベッドに座った。

 「こっちは雨の成分も調べることは出来ないし、被害者もいないからな。進展はほとんどと言っていいほどないな・・・」

 「そうか・・・」

 「「・・・・・・」」

 二人は黙り込んでしまう。

 ドキューーーーン!!!

 しかし、その時だった。

 沈黙を破るように一発の銃声が部屋に轟くと、割れたガラスから風が入り込んできた。

 「な・・・!!?」

 ドキューーーーン!!!

 ドキューーーーン!!!

 二人に考える暇も与えないように、再び銃声が鳴り響く。

 二人は身を低くして、なんとか避ける。

 「ど、どうなってるんだ?」

 「俺に聞くな!」

 鈴木が聞くが、前田としてもそんなものに答えている暇はない。

 ドキューーーーン!!!

 ドキューーーーン!!!

 銃声は休むまもなく鳴り響き、ガラスの破片がそれと同時に飛び散ってくる。

 「おい、どうする?」

 鈴木がベッドの影に隠れてきいてくる。

 テーブルの下に隠れている前田は少し考え込んだが、すぐに口を開いた。

 「・・・・・・・大事なものがあったら、持っとけよ。部屋を出るぞ。」

 「はぁ!?」

 鈴木が驚いたような顔をする。

 「ど、どうやって部屋を出るんだよ?」

 「何とかして出るしかないだろ。この部屋にいてもいつか撃ち殺されるだけだぞ。」

 「・・・・・・」

 さすがに鈴木も何も言えない。

 「別に持っていくものはないけど・・・」

 「そうか・・・・」

 前田はそう言うと、すばやくテーブルの上の封筒を取った。生物の写真や小宮山からもらった資料などが入っている。

 「それじゃあ、これを持っとけ。」

 前田が鈴木に封筒を投げる。

 「ああ・・・でも、どうやって部屋から出るんだ?どう見てもドアまでは5メートル以上はあるぞ。」

 「最初に電気を消してくれ。」

 前田が鈴木の頭上のスイッチを指差す。

 鈴木は何とか手を伸ばして、スイッチを切った。部屋は暗闇に包まれる。その中で響く銃声には不気味なものがある。

 「相手も外からだからそんなに俺たちの姿は見えてないはずだからな。テキトーにしか撃ってこれないはずだ。それに・・・こんなに銃声をバンバン鳴らしてるんだ。そろそろくるころだぜ。」

 「・・・?」

 ウ〜〜〜、ウ〜〜〜・・・・

 前田がそう言った瞬間、どこからかパトカーの音が聞こえてきた。それと同時に銃声が一瞬、止まる。

 「賢治っ、いまだ!!!」

 前田の声と同時に二人は飛び出すと、一直線にドアを目指した。それに気づいたのか再び銃声が聞こえるがすでにおそい。二人はすぐに部屋を出た。

 

 二人は廊下を走り抜ける。

 「おい、いつまで走るつもりだ?」

 少し疲れたのか鈴木が言った。

 「まだまだだ。このホテルの中にも潜んでいるかもしれないからな!」

 前田が言ったちょうどその時、二人の前に人影が現れた。

 二人は驚いて、すぐに止まる。

 「だ、大丈夫ですか?」

 それは警察官だった。

 この人の後からも続々と警官が現れる。

 二人は安心するとその場に倒れこんだ。

 

 

 那覇警察署

 次の日、二人は警察署で事情聴取を受けていた。

 「なるほど・・・ホテルで休んでいた時にいきなり外から発砲と・・・」

 30歳ぐらいと思われる、金城警部補が二人の話を聞いていた。

 「何か、わかりますか?」

 鈴木が聞いた。

 「う〜ん・・・お二人の話を聞けば性転換事件となにか関係がありそうだけど、あいにく、うちには性転換事件が起こったってことは聞いてないからね。」

 「えっ!?ここでは起こってないんですか?」

 前田が驚いたように聞いた。

 「ええ・・・このところ沖縄では雨が降っていないんですよ。どうかしたんですか?」

 前田は少し考えると口を開いた。

 「私達は那覇国立生物学研究所爆発事件と何か関係があるんじゃないかと思いまして・・・」

 「あぁ、あの事件か・・・。ちょっと待っててくれ。」

 金城は立ち上がると、大きな棚から一つのファイルを取り出した。

 「ここにその事件のことが書いてあるんだよ。」

 近状はそう言いながら再び席に着いた。

 「この事件は6月の深夜、那覇国立生物学研究所で起きた。死亡者は八名、生存者が井原智一さん、豊田直幸さん、田口文也さん、横田弘幸さん、河野洋平さん、あとまだ名前がわかっていない中学生ぐらいの少女が一人の計六名。警察側では研究中の事故ではないかと見ている・・・」

 「ちょ、ちょっと待ってください。」

 前田が止めた。

 「な、なんで深夜の研究所に中学生の少女がいたんですか?」

 「う〜ん・・・それがまだよくわかってないんですよ。少女のほうもよくわからないことを口にしているし・・・おそらく死亡した研究員の娘さんじゃないかとおもってるんですがね・・・」

 「あれ?死亡者は全員わかってるんでしょ?」

 今度は鈴木が口を開いた。

 「それがね・・・わかったのは杉本さん、栗田さん、松田さん、清水さん、佐々木さんの五人だけなんですよ。あとの三人は爆発現場に近かったせいか、性別も判別できないくらいひどい状況なんですよ・・・小笠原さんはその時、研究所にいたことが確認されていますんで、死亡と断定したわけです。」

 「・・・・・・・・・」

 二人は黙り込んでしまった。

 「あの・・・その生存者の方はどこにいらっしゃるかご存知ですか?」

 前田が思いついたように言った。

 「・・・たしか、那覇総合病院にまだ入院中だったはずですけど・・・。もしよかったら今から行きますか?その方がよくわかるでしょう。」

 前田と鈴木は迷わず首を縦に振った。

 金城は用事があると言うので、病院の場所を教えてもらい、二人はすぐに向かった。

 

 

 それから一時間後、二人は那覇総合病院に到着した。

 ちなみに二人の警護として、一人の警官がついている。一応、二人は狙われているのだ。

 前田がすぐに受付に行く。

 「山下さん、昨日の犯人はまだわかってないんですか?」

 鈴木が、若い警察官の山下に聞いた。

 「はい・・・、撃っていたのが隣のビルだというのはわかったんですけど、何の証拠もなかったんですよ。これはプロの犯行ですよ。」

 山下の言葉に鈴木は息を飲む。

 「おーい、わかったぞ。」

 その時、前田が戻って来た。

 「4階の415号室だ。全員、そこに入院しているらしい。」

 前田の言葉で、三人はすぐにそこに向かった。なるべく早く済まさないと命を狙われる危険性があるのだ。

 三人はエレベーターを降り、すぐに向かう。

 「井原・・・豊田・・・田口・・・横田・・・河野・・・、ここで間違いないな。」

 前田は415号室の入院者の名前を確認すると、扉を開けた。

 

 そこはかなり大きい部屋だった。

 そこの部屋の全員がこちらを向く。

 「あの・・・、福岡国立生物学研究所の前田誠司というものですが・・・」

 「あ、前田さんですか!?」

 近くのベッドに座っていた男が声をあげた。

 「私、豊田というものです。所長からよく話を聞いていますよ。それで、今日はどうしたんですか?」

 豊田は少し頭を下げた。

 「出来れば事件のことを聞きたいと思いまして・・・」

 「・・・・・」

 それを聞いたとたん、豊田は少し俯く。

 「あ、迷惑でしたらいいんですよ。私達、すぐに帰りますから・・・」

 鈴木がすぐにフォローする。

 豊田は顔を上げると、口を開いた。

 「それでしたら、こちらに来てください・・・」

 豊田はそう言うと立ち上がって、3人を導いた。

 豊田は奥のカーテンがかかっているベッドに導き、そのカーテンを開けた。

 すると、そこにはかわいらしい中学生ぐらいの女の子が静かに寝息を立てていた。

 「「・・・・・・」」

 前田と鈴木は言葉を失ってしまう。

 「小笠原さん、起きてください!」

 豊田が少女の体を揺さぶった。すると、少女はゆっくりと目を開ける。

 「ふぁ〜あ・・・・・」

 少女は大きなあくびをした。肩ぐらいの髪と、大きな瞳・・・かなりかわいい少女である。

 少女は目をこすると、二人の方を見た。

 「・・・・・・・・・」

 前田と少女の目が合う・・・。

 「うわあああぁぁぁーーーー!!!」

 少女は大声を上げて飛び起きた。前田と鈴木は呆然としている。

 「な、ななななななな、なんで誠司がここにいるんだよ!」

 「落ち着いてください。お見舞いに来てくれたんですよ!」

 豊田が必死に説明する。

 「????・・・あの、どーゆうことですか?」

 だんだん頭が混乱してきた鈴木が、聞いた。

 「あ、まだ言ってなかったですね。この女の子が小笠原敦所長なんです。」

 豊田がいかにも驚いたかと言ったような口調で言った。

 「「・・・・・ふ〜ん・・・・・」」

 前田と鈴木はテキトーに答える。

 「い、いや、『ふ〜ん』ってなんだよ!俺は女になってるんだぞ!『なにいいいいぃぃぃ!!!』っていうぐらいの反応ぐらいしてもいいんじゃないのか?」

 小笠原は期待していたのかつまらなそうな口調で言った。

 「俺たちは性転換の現場を見てるからな・・・。まぁ、さすがにお前が生きてたのは驚いたけど・・・」

 前田が言った。

 「そーだろ、そーだろ。胸なんてすごいんだから。見せてやろうか?」

 小笠原がいやらしそうな顔で言う。

 「そんなことやってる暇はないんだ、敦。俺たちは命を狙われてるんだからな。」

 

 

 『沖縄県の午後は雨になり・・・』

 隣のテレビでは天気予報を伝えていた。

 「なるほど。そういうことか・・・・」

 「なぁ、何か知っていることはないか?」

 前田が聞いた。

 「知ってるもなにもその生物を作ったのは俺だからな・・・」

 小笠原が呟く。

 「な!?・・・・お、お前のせいで何百人の人が死んだのか!」

 鈴木が叫びながら殴りかかろうとした。

 「お、落ち着けって!たしかに作ったのは俺だけど、頼まれたんだよ・・・」

 「頼まれた・・・?」

 「ああ・・・あれは四月ぐらいだったかな・・・?」

 

 四月のある日、一人の男が研究所にやってきたんだ。

 黒いコートを着ていて、帽子を深くかぶっていたから顔はよく見えなかったけどな。その男は俺に会うなり、アタッシュケースから試験管を取り出して、こう言ったんだ。

 「この生物を作って欲しい・・・」

 俺はあんまり乗り気じゃなかったんだけどな・・・その男はさらにもう一つのケースを開けて俺に見せたんだ。

 「・・・・・・・!?」

 驚いたよ。そこにはケースいっぱいに札束が入ってた。ドラマでしか見たことなかったからな・・・。

 「この仕事を受けてくれればこの金は渡そう・・・。だが、もし受けなかったら・・・」

 男はそう言うと、腰から拳銃を取り出して俺に向けた・・・。さすがに俺もヤバイって思ってしぶしぶ了承したよ。

 それから、二ヶ月・・・

 ちょうど、事件の前日に試験管の中にあった遺伝子情報などから生物が完成した。まだ、どんな能力を持った生物かわからなかったから、次の日にでも調べようと思っていたんだ・・・。

 しかし、深夜・・・・

 「所長!『X』が増殖しています!」

 佐々木の声に俺は飛び起きると、『X』を作っていたタンクに向かった。

 

 「X(エックス)・・・?」

 前田が聞いた。

 「ああ、俺たちがつけた名前だよ。さすがにいつまでも『生物』とは呼べないからな。」

 

 俺はタンクを見て驚いた。ほんとに増殖いていて巨大なタンクが割れそうになっていたんだ。

 「佐々木!全員を避難させろ!」

 とっさに危険と判断した俺は、佐々木にそう言った。

 

 「それと同時にタンクは大爆発。俺は生物を体に浴びてこうなっちまった。雨に生物が含まれていたのはおそらくその時の爆発で上空に舞い上がったものが雨に溶け込んだんだろ・・・」

 「その男が犯人か・・・」

 鈴木が怒ったような口調で言う。

 「いや、そうとは限らない・・・。こんなでっかい事件を起こしてるんだ。裏にもっと大きなものがあるかもしれない・・・」

 前田は冷静に言っているが、表情からは怒りが感じられる。

 「ああ、二人とも頑張って解決してくれ・・・。今、一番真実を知っているのはお前達なんだからな・・・」

 ドキューーーーン!!!

 「がっ・・・・・」

 その時だった、突然窓が砕け散ると、小笠原の頭からは大量の血が噴出した。

 「「小笠原ぁーーーー!!!」」

 ドキューーーーン!!!

 ドキューーーーン!!!

 二人が叫んでいる間にも窓から銃弾が撃ちこまれる。

 「皆さん、避難してください!!!」

 鈴木が叫んだと同時にほかの患者も逃げ出す。

 「ど、どうかしたんですか!?」

 山下は部屋に入ってくるなり自分の目を疑った。床には見たことがないほどの大量の血・・・。普通の人なら数秒で失神しているだろう。

 「患者が撃たれた!」

 前田が叫ぶ。

 「えっ!?」

 山下はすぐに無線を取り出す。

 『こちら山下!現在、那覇総合病院で発砲事件発生!被害者は頭部から大量の出血で危険な状態!犯人は逃走中!至急応援願います!』

 このへんはさすが警察官である。

 「前田さん、鈴木さん、ここは僕に任せて早く逃げてください!」

 「・・・・」

 山下の言葉に二人は無言で頷くと、すぐに走りだした。

 

 『お前達が最後の望みなんだ・・・』

 『二人ともがんばって解決してくれ・・・』

 走る途中、前田の脳裏に二人の言葉がよみがえる。

 「小宮山・・・小笠原・・・」

 大学時代からの親友だった二人・・・。前田の目には自然と涙があふれる。

 そんな前田を見て、鈴木が声を掛ける。

 「誠司・・・二人のためにも泣いてる場合じゃねーだろ。」

 前田は涙を拭き、大きく頷く。

 そう、今泣いている場合ではない。二人のためにも絶対に犯人を捕まえなければならない。しかも、ご丁寧に犯人の方から出てきているのだ。

 「・・・よし!」

 前田は決意を新たにし、力強く走り始めた。

 

 

 ウ〜〜〜、ウ〜〜〜・・・

 それから数十分後、那覇総合病院に警察が到着した。

 金城警部補が現場を見ている。

 「なるほど・・・前田さん達が話している時にいきなり外から発砲か・・・それで、被害者は?」

 「はい、現在集中治療室で手術が続いていますが危険な状態だということです。」

 隣の山下が答える。

 「そうか・・・そーいや、前田さん達はどうした?」

 「はい、自分がここに居ては危険だと判断したので逃げるように言いました。」

 「おまえが守らないでどーするんだよ・・・」

 金城が呟く。

 「まあ、いい。至急、警官十名を前田さん達の発見及び保護に向かわせろ。」

 「はっ!」

 山下は敬礼すると、すぐに病室を後にした。

 『前田さん・・・無事でいてくれよ・・・』

 

 

 その時、前田は街中を走っていた。どこかではぐれたのか隣に鈴木の姿はない。

 「はぁ、はぁ・・・・」

 前田の体力はほとんど限界にきていたが、だれかに追われているような感じが続いている。

 前田はそのまま大きな古い倉庫に逃げ込むと壁に倒れこんだ。

 「はぁ、はぁ・・・・」

 前田は胸のポケットから携帯電話を取り出すと、番号を押し始めた。

 

 プルルルルル・・・プルルルルル・・・

 その時、金城の携帯がなり始めた。

 「はい、金城ですが・・・」

 『はぁ、はぁ・・・前田です。』

 「前田さんですか?」

 

 「はい・・・」

 前田は病院にいる金城警部補に電話をかけていた。

 『今、どこにいるんですか?』

 「ど、どこですね・・・」

 前田はあたりを見回すがさすがにわからない。

 『どこなんだ?目印になりそうなものでも・・・』

 「そ、倉庫です・・・大きな倉庫・・・」

 ドキューーーーン!!!

 しかし、その時前田の声を掻き消すように銃声が倉庫内に響いた。

 「・・・・・」

 前田はすぐに携帯を切る。

 

 「い、いい今の音は・・・・」

 その銃声は金城の声にも聞こえていた。

 「く、くそ!」

 金城はすぐに無線を取り出して叫ぶ。

 「犯人捜索中の全パトカーに告ぐ!近くの倉庫を片っ端から捜索しろ!急げ!」

 金城も無線をきるなり、病室を飛び出した。

 

 「フフフ・・・逃げ足の速い奴だな・・・」

 「・・・・!?」

 倉庫内に響いた声に前田は驚いた。

 「貴様はもう逃げられないんだ。さっさと出てきたらどうだ・・・」

 前田はその声に従って、声の主の正面に立つ。

 「・・・やっぱりお前か・・・」

 「フフフ・・・」

 「田村ぁ!」

 そう、そこに立っていたのは福岡県警の田村だった。田村は銃口を前田に向けている。

 「どーいうことなんだ・・・」

 前田は怒りで手が震えている。

 「貴様には関係ない・・・」

 田村は不気味な笑みを見せている。

 「俺はどーせここで殺されるんだろ?だったら教えてくれてもいいんじゃねーのか?」

 田村は少し考え込んだが、すぐに口を開いた。

 「復讐だよ・・・この国の全てにな・・・」

 「復讐・・・?」

 ピカッ!

 ゴゴゴゴゴ・・・・・

 その瞬間、雷が轟き、厚い雲に包まれていた空から雨粒が落ちてきた。

 

 「おい、まだ見つからないのか?」

 『第三材木倉庫、誰もいません!』

 「くそっ!」

 そのころ、那覇市内を走っていたパトカー内で金城はいら立っていた。

 捜索班から送られてくる無線はどれもだれもいないというもの。前田が危ないと知っている金城にとってはいら立つのも当然だろう。

 「どこにいるんだ・・・」

 

 「俺には高校生の女の子供がいたんだよ・・・」

 「・・・・」

 「あるとき、あいつがストーカーに狙われてな・・・俺は警察に被害届を出したんだけどな、一週間後に殺されたんだよ・・・」

 「それなら・・・・」

 「うるさい!」

 田村が前田の声をかき消すような大声で叫ぶ。

 「どうも納得いかなかった俺は警官になっていろいろと調べた。そしたらどうだ!警察はなんの対処もせずに放っていたんだよ!俺は一人でどこにもぶつけようがない怒りで悩んでいた・・・だが、その時ある組織が声を掛けてくれたんだよ。」

 「組織・・・?」

 「ああ・・・なんでも俺たちのような人を救うような活動をしているらしいんだが、その組織が今まで調べた内容を見て唖然としたよ。政府のお偉いさんは誰一人としてまともな仕事はしていなかったんだ!」

 「しかし、そんなことで復讐なんて・・・」

 「そんなことだと?ふざけるな!俺はそれを見てこの国にいるのがバカらしくなったよ・・・」

 「ふざけているのはそっちだろ!」

 前田がいきなり大声で叫んだ。

 「政府が悪いから大量殺人だ?そんなことでお前の娘さんは喜ぶと思っているのか?」

 「うるさい!」

 ドキューーーーン!!!

 田村の撃った弾が前田の頬をかすめる。

 「政府が悪いから凶悪犯罪が増えるんだ!」

 「ははは・・・」

 前田が笑みを浮かべる。

 「な、なにがおかしい!」

 「そんなことを言っているおまえ自身がそうなってるじゃないか。罪のない人々を大量に殺す・・・政府のお偉いさんよりたちが悪いと思うけどな・・・」

 「さっきからうるさいんだよ!」

 ドキューーーーン!!!

 田村はまた発砲するが、今度は当たらない。

 「それで・・・あの生物はその組織が作ったのか?」

 「ああそうだ!南極の氷の中に埋まっていた生物らしいがな・・・さすがに性転換するとは思ってもみなかったよ!」

 田村は完全にキレている。

 「・・・なぁ、頼むからもうやめないか・・・?」

 「なにっ!?」

 田村は前田のいきなりの言葉に驚いた。

 「国を変えるのにそれだけたくさんの犠牲が必要なのか?お前達のつまらない思想によって殺された人の身にもなってみろ!だれにも・・・人の命は・・・奪っちゃいけないんだよ・・・」

 「くっ!?」

 ウ〜〜〜・・・

 その時、どこからかパトカーのサイレンが聞こえてきた。

 「ようやく来たようだな・・・」

 「き、貴様・・・はじめからこれを・・・」

 「お前みたいに人の命を軽視するような奴に、この世界が変えられるわけがないんだよ!」

 「貴様ぁぁぁぁーーーー!!!!」

 ドキューーーーン!!!

 前田は飛び掛ったが、田村の銃弾の方が一歩早かった。

 銃弾は前田の肩を貫通し、前田はその場に倒れこむ。

 「その銃弾はあの生物を含んだ特別製だ。じわじわと死んでいくがいい・・・」

 「く・・・・た、田村・・・・・」

 前田は必死に立とうとするが、体が動かず、目がかすんでいく。

 田村はサイレンが鳴り響く雨の中へ消えていった・・・。

 

 

 

 ピピピピッ、ピピピピッ・・・・

 カチャッ!

 「もう、朝・・・」

 ベッドの中の少女が時計を見て、体を起こす。

 ふと、少女は窓の外に目をやった・・・。

 ザー・・・・

 夜の間に降りだしたのか、雨が降っている。

 「雨・・・か・・・」

 あの事件のせいで、近頃は雨の日に外に出る人がめっきり減ってしまった。

 結局、いまだに組織の足取りはつかめていない。あれから大きな事件はまだ起こってないが、いつかは動いてくるだろう。

 人々の心から雨という恐怖が消えるのだろうか・・・。

 この日も、あの日のような雨が静かに降り続いていた・・・。

 

 

 END

 

 

 <あとがき>

 どうも、こんにちは。いちろうです。

 おそくなってすいません。ほんとは八月中に書き上げるつもりだったんですけど、姫神書いてたので一ヶ月ほどずれちゃいました(笑)。

 毎度、萌えが少なくてすいません。

 それではっ!

 

 

 ※この作品はフィクションです。実在の人物、団体、事件などには一切関係ありません。

 

 


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