戻る

まこと クロスオーバー1
作:sino



「むらさき まこと」

「えっ?なに自分の名前言ってんだよ?」

「その娘の名前だよ。
 親父たちもう入籍は終わっているから姓も同じになっているから」

6月の末俺の親父は再婚した。
お互い再婚同士。
その上家買ったため金がない。
それで披露宴が無くて俺のまわりはあまり知らないようだけど。
でも、新婚旅行先の教会で二人だけの結婚式したって言っていた。

中学2年、一学期の終業式の帰り道。
俺は小学校時代からの友達つよしに父親の再婚相手の娘の写真を見せていた。
写真には髪を背中まで伸ばした美人のバストアップが写っている。

「写真の裏、見てみろ。」

写真の裏には

  真琴

と書いてある。

「なるほど。字は違うが読みはおまえと同じになる訳だ。」

「ああ、俺のは、誠実の誠。の 誠 だ。」

「でも、いっしょに住みだしたら同じ呼び方になってややこしくないか?」

「ああ、だから俺が親父に再婚相手を紹介された時、誠(セイ)と呼んでくれっていったんだ。」

「セイね。何かかっこいいな!
 しかし、美人系の顔だね。誠と並ぶと姉妹だと思われるな。」

「それを言うなよ。
 この間、彼女たちの引越しを手伝った時、
 引越しの業者さんにおまえの言うように妹に見られたんだから。」

そのときの事を思い出す。
その日、ジャージの上下を着ていたせいもあるが、
俺が、居間に置かれたTV回りののケーブルを接続していたとき。

「かわいい顔をしてこんな事わかるんだ?」

と切り出し、

「お姉さん美人だね。あと二三年たったら君も美人になるんだろうな?」

と業者のおじさんが言ったのだ。
そのとおり認めたくないが私服の俺は女によく間違えられる。
女顔の上に、眉は薄いし、マツゲは濃い、変声期前のソプラノボイス、
トドメは身長が150センチ未満ってことだ。
級友たちには大きく差をつけられている。

「俺、男だぜ。それに俺の方が3ヶ月年上なのに・・・」

「じゃ、彼女は妹って訳か。どう見ても逆じゃないか?
 彼女の方が鼻筋の通った大人びた美人。
 それに身長も高いんだろう?
 おまえは背も低いし幼顔のかわいい子ちゃん系だ。
 まあ、第二次性徴期をすぎたらバランス取れるだろうけど。」

つよしは俺と写真を見比べながら、

「『おにいちゃん』
 『真琴』
 ガバッ!!
 なんて展開を夢見てるかも知れないけど・・・
 あきらめろおまえじゃ絵にならねぇ!
 俺だったら身長も高いしいいかも知れないな?
 俺に彼女紹介してくれよ。」

「紹介って?」

「『お兄様の親友のナイスガイのつよしです』って」

「なにがナイスガイだ。」

父親の再婚に伴って4人が住める家に引っ越すことが決まった。
今すんでいる所が親父の職場が変更になってから遠くになった事もあり、
まったく違う市に移転となった。
当然学校も転校という訳でこの学校も最後。
つよしと通学路を帰るのも最後。
そうこいつとは小学校低学年の頃からの付き合いだ。
結構軽めのこいつは俺を女の子だと思って声をかけてきたらしい、今となっては懐かしい思い出だ。
俺の家が近づいてきた時、つよしが、

「そういや誠。
 長い付き合いだったな。
 今日で一応お別れか!
 それで、今後の予定は?」

「まずは俺の引越し。」

「お前だけこっちに残ってたんだっけ?」

「そう。学校があるからね。
 一学期が終わるまでって事でね。
 親と彼女たちはもう新居にすんでいるんだ。」

「彼女は学校どうしたんだ?」

「さすがに女の子の一人暮らしはまずいので引越し先から通っているよ。」

「でっ、いつするんだ引越し。」

「7月中に今の部屋を空けなきゃ何ないので来週の火曜。」

「来週の火曜。
 畜生、俺その日用事がある。
 お前の引越し手伝ってさりげなく真琴ちゃんに俺を紹介して貰おうと思ったのに!」

「残念でした。その日は真琴ちゃんはいないよ。」

「えっ、なんで?」

「俺の引越しの前日から真琴ちゃんは病院に入院。」

「入院?
 彼女体悪いのか?」

「真琴ちゃん。体に出来物があって、夏休み中にそれを取り除く手術をするんだって。」

「手術って言えば、誠もするんだよな?」

「ああっ、俺の引越しの後で。
 親父は俺が真性なんで保険が利くから早めにしたほうが良いって。」

「ふ〜ん」

「近所の医者に引越し先の近くの医者紹介された。
 実は彼女と同じ病院だ。」

「なんだと!じゃ、おまえのお見舞いに行くから病院教えろ!!」

「俺自身の入院なんて3日の予定だし、恥ずかしいからいらない。
 それに、真琴ちゃんねらいだろう。絶対教えてやらん。」








俺の引越しが終わり、手術のため俺は病院に来ていた。
手術の前、真琴ちゃんを見舞おうと真琴ちゃんの病室に向かって歩いていると、
廊下で真琴ちゃんにあった。
うつむきながら廊下を歩く彼女に俺は、

「あれ、なんか元気なさそう。」

「そう?」

「時間のかかりそうな手術なんでなかなか予定が決まらないっていっていたから
 心配になってきたの?」

「うんでも。一昨日、今日予定していた手術が無くなったので、私の手術をすることになったんだ。
 それで一昨日から液体の食事ばっかりだからおなかがすいて。」

「液体の?」

「手術が終わったらしばらくおトイレいけないの」

「なるほど。
 でも、前から思ってたんだけど、どんな出来物なの?
 とる前にちょっと見てみたいんだけど?」

彼女は顔を赤らめると、

「足の付け根なの。」

「・・・・」

「・・・・」

それでトイレが・・・

「俺も今日、手術なんだ。
 お互いがんばろうね!」

時計を見て、

「私そろそろ行かなきゃ」

と言って彼女は俺の来た方向に早足でかけていった。

その後、俺はシャワーで軽く体を洗いガウンに着替えて、手術前の診察をし、
待機のため廊下の椅子に座っていると、階段の方から看護婦が

「むらさき まことさん? むらさき まことさん?」

誰かを探すように俺の名前を呼んでいた。

「村崎 誠は俺ですけど。」

「あら、こんな所にいたの?」

俺は別の階につれていかれた。麻酔室と書いた看板が見えた。
白衣を着た男がカルテのようなものと見ながら名前を呼ぶ。

「むらさき まこと さん?
 困りますね。予定通り来て頂かないと。
 次の段取りもあるのですから」

「はあ。」

なんか怒っている様だ。
あの廊下で待っていろって言われたような気がしたんだけど、

「それでは麻酔をかけますんで」

と彼が注射器を俺に当てた。
局部麻酔だと聞いていたけど、何か変だ。
そんなことを考えていると段々意識が遠のいていった。





「・・・・誠くん!誠くん!」

俺を呼ぶ声が聞こえる。
目を覚ますと、親父の再婚相手のあやかさんが俺に向かって叫んでいた。
手術が終わってベットに寝かされていたようだ。

「あっ、あやかさん?」

俺が言う。ちょっとまだ”お義母さん”と呼ぶのには抵抗がある。

「目を覚ました様ですね。」

彼女の後ろの白衣の男が言う。

「体の自由は利かないはずだよ。まだ、麻酔が残っているからね。」

白衣の男はそう言いながらあやかさんを近くのパイプイスに座らした。
並んだイスに真琴ちゃんも座っている。
確かに体が動かない。
特に腰のあたりがガッシリと固められているようだ。
そしてベットの脇にあるボタンのスイッチを押すと、ベットの俺の背中の部分がせり上がって
40度くらいの角度で止まり上半身が背もたれ状態になった。
そしてまた、白衣の男が、

「横になりながらだと話がし難いだろうからね。
 彼のご家族は後、お父上だけですね?」

あやかさんが、

「はい。もうじき着くはずです。」

「失礼ですが、同じ説明を何度もしたくないので待たせていただきます。」

しばらくして扉が開いて親父が入ってきた。

「あの、村崎 誠の父です。」

父があやかさんの隣のパイプイスに腰掛けた。
白衣の男が、

「これで全員そろいましたね。
 私はこの病院の危機管理を担当しているものです。
 では、説明します。」

白衣の男は俺に向かって、

「むらさき まこと くん だね」

「はい」

と、俺が言い。
そして今度は真琴ちゃんに向かって、

「むらさき まこと さん だね」

「はい」

と、彼女がいった。

「ご両親の再婚のため姓字が同じになりました。
 名前の方は漢字で書くと違いますが、同じ まこと です。
 そうフルネームは二人とも読みは同じ むらさき まこと になるのです。
 そして、彼女の手術にはある程度の時間がかかるためなかなか予定が立たなったのですが
 一昨日、今日予定していた手術が別の日になったので急遽彼女の手術を今日にしたのです。
 しかし、まさか同日に同姓同名の人の手術が入っているとは思いませんでした。
 彼女が麻酔室になかなか姿を現さないので看護婦に探しに行かせたのですが、
 看護婦は彼を彼女と間違えて麻酔室につれて来ました。
 ただ、不幸だったのは、看護婦も、麻酔担当の医師も、
 手術の執刀医も彼女の顔を知らない者ばかりでした。
 恐らくそれが原因だったのでしょう。
 まことに申し訳ありませんが、彼女に施す予定の手術を彼にしてしまいました。」

「えっ?」

真琴ちゃんが申し訳なさそうにうつむきながら、

「ごめんなさい。私が急に手術を怖くなってお腹が痛くなって・・
 でも、いなくなったのは20分くらいですよ。」

顔を上げ彼女は弁明した。

「担当のお医者さんはどうしたのですか?」

あやかさんが聞く。

「彼は今日非番でした。また、執刀した医者はこのケースの手術の経験がかなりありましたので
 良かれと思いまして。」

彼女は足の付け根の出来物を取り除く為、ここに入院したはずだ。
俺は自分の足元に目をやった。
力を入れても腰が固定されていて動かない。
腰から太ももまでギブスで固められているみたいだ。
しかし、俺にはそんな出来物なんてないぞ?
それに足の付け根の手術だったら男と女で違いに気づくはずだ。
なぜそれで何も疑わずに手術したんだ?
俺は怖くなって聞いた。

「あの、今朝確か足の付け根の出来物を取る手術だって真琴ちゃんに聞いたんですけど、
 俺は男、真琴ちゃんは女間違うハズないじゃないですか?
 どんな手術をしたのです?」

白衣の男があやかさんと真琴ちゃんに向かって、

「奥さん。言ってもいいですね。」

あやかさんが無言で頷く。

「彼女に行う予定の手術は・・・
 端的に言って、性転換手術です。」

性転換?

真琴ちゃんが女だから、真琴ちゃんの性転換手術は女から男になるはずだ?
彼女は男になりたかったのか?
男の俺が手術を受けて何で間違うんだ?

「女の真琴さんの性転換手術でどうして間違いが起きたのか疑問に思われるでしょう?
 彼女に行う予定だった手術は男性から女性への性転換なのです。
 そう、戸籍上は彼女は女性ですが、生物学的には男なのです。」

「「ええぇ!!」」

俺と親父は驚いた。

「その理由については奥さんにお伺いしたいのですが?」

「わかりました。
 私の前の主人は女の子を欲しがってました。
 ところが、私の体に問題があって出産はかなり難しかったのです。
 それでも何とか一人はと産んだのが真琴でした。
 しかし、産まれたのは男の子、そこで、主人には女の子が産まれたと言ってしまったのです。
 出産届も当然そう申告しました。
 しかし、そのうそは3ヶ月もせずばれてしまいました。
 1年後、彼は他の女性に女の子を産ませました。
 そして、そちらの家庭に入り浸ってしまったのです。
 しかし、見合い結婚の為、しがらみからなかなか別れることもままならないまま、
 私は真琴を女らしく育てれば主人も帰って来ると思っていました。
 しかし、その相手女性の娘が中学校に進学するとき、
 有名私立を受ける為片親だと都合が悪いとい理由で離婚したのです。
 その頃には、村崎さんと出会ってまして、前の主人には未練はなかったのですが、
 離婚した事で村崎さんとの再婚が現実となり、その後の生活を考えたとき
 本当の事を言うか?  うそをつき通すか?
 真琴と相談した結果、真琴は成形手術を受けてくれると言ってくれました。」

あやかさんは真剣な顔をして言う。

「そして現在に至る訳か。
 一ヶ月一緒に住んでいたけど気がつかなかった。
 あやかも真琴ちゃんも大変だったんだな。
 俺たち家族なったんだから一言言ってくれればよかったのに。」

親父は関心しながらそう言ってあやかさんの背中を包むようにたたいた。そして、

「しかし、性転換手術は優勢保護法の為、原則的には出来ないのでは?」

すると白衣の男が、

「戸籍と別の性に変更する手術は問題が多いのですが、
 戸籍に性を近づける分には問題はあまり無いのです。
 戸籍上女性である以上、子供が産めないだけで結婚や就職に問題はないのですから。
 それにこう言う手術は秘密裏に行われるものです。」

俺は事のあらしまを聞いて、言葉が出なかった。そして、自分の股間に目をやると、ガッチリと
固められているのであろうシーツにギブスの形が浮き出ていた。
そして、俺は、

「でも、元に戻すことはできるのでしょう?
 指なんか千切れてもまたくっつけることが出来るんだから。」

「すいません。誠くんの切除部分は、手術終了の時点で処分してしまいまいました。
 再接合は無理です。」

「じゃあ、真琴ちゃんのそれをくっつけることは?」

「それも拒絶反応等を考えると危険が多すぎます。」

キッパリと言う。
そこで親父が、

「元に戻らないというんですね?
 そうなると、医療ミスとして損害賠償を訴えることになりますが?」

白衣の男が冷静にこう言った。

「基本的には業務上知り得たことは守秘義務が発生しますが、裁判となればお二人の秘密が
 世間に公表されることとなります。」

「くっ!」

「あなた」

「まったく賠償を払わないとは言いませんが、そちらにも落ち度があります。
 そもそもの原因は奥さんが真琴さんの性別を女性とした公正証書原本不実記載。
 これは、犯罪です。
 さらには、娘さんが麻酔室に現れなっかたこと。
 それから、誠くんも今日真琴さんの手術を知っていたのに、
 何も疑いもせず麻酔室について行ったこと。」

彼は病院側に責任は無いかのごとく言う。ものすごく険悪なフインキの中、
自分のやったことを責められた形になって沈黙を守っていた真琴ちゃんが、

「ひとつ、いいアイデアがあるんですけど?」

と言った。

「「「「いいアイデア?」」」」

全員が真琴ちゃんの方に振り向いた。

「私は若干、ホルモン治療をしていますが、まだ生物学的には男です。
 また、男の機能が失われるまで行っていない。
 そして、誠くんはある意味もう男には戻れない。
 そして、ママと村崎さんが結婚をして、9月から私も誠くんも新居の近くの学校に
 転校することになります。
 そう周りに知り合いがいなくなるわけです。
 そこで、私が男の誠くんとなり、誠くんが女の私として転校すれば良いのでは。」

「「「「!」」」」

「無論。病院側も多少なりとも非があるのですから、
 今後、二人にかかるそれぞれの治療費や、買いなおす必要のある服などの必要経費は
 病院に負担してもらうという条件は付きますが?」

「「「なるほど。」」」

みんな俺の顔を見て、

『確かに誠(くん)は顔は完全に女顔、ハッキリいってかわいい。
 体形は第二次性徴期前だから未成熟な女の子として十分通る。』

と思っていたりする。





こうして俺 誠 と彼女 真琴 の入れ替わり人生がスタートすることなった。


続く


戻る

□ 感想はこちらに □