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カプセル モンスター
作:八重洲二世
特別展 世界のカプモン・ショー
nomad2000さん
撮影
「なにが起こったみゅー…」
角さん
撮影
「かしゅみ〜っ」
みるくせーき さん
撮影
「魅了しちゃうもん」
猫野犬貴 さん
撮影
ロッコンと融合ver
どら さん
撮影
「よーし、オレに決めた!! 行くぜ!」
※撮影者の皆さんありがとうございます!
「カプモン、ゲットだぜぇ〜」
サトスィは、そう言って派手にガッツポーズを決めてみせた。
カプセル・モンスター…通称、カプモン。
彼ら謎の新生物種がいつしかさほど目新しいものではなくなって久しい。一部の物好きな研究者をのぞいて、いまではカプモンたちの存在に疑問を持つ者などいなくなった。疑問を持とうが持つまいが、現にカプモンたちは世界中にはびこっている。それにカプモンはカプモン。それだけ分かれば、日々の暮らしに支障はない。大人たちは、よけいなことに頭を使う暇などないのだ。
そして今日も今日とて、少年少女の冒険は続く。
「カシュミ〜」
と、後ろからやってきた仲間の少女に手を振る。
サトスィはぐっと、モンスターカプセルを突き出した。
ずっしりと重量を増したカプセルの中には、さきほどゲットした野生のミックラス(ツノ系カプモン。弱点:電撃)が入っている。
生きて動いているカプモンを、一瞬にして小さなカプセルに閉じこめてしまう。モンスターカプセルが世に出た当初は、その魔法じみた機能に誰もが目を丸くしたものである。もっとも、いったんモンスターカプセルが普及し、その存在が身近なものになってしまうと、これまたいつの間にか、その動作原理を気にする者などいなくなった。電話やラジオが発明されたときと同じである。
「え〜、ミックラスをゲットしたの〜?!」
サトスィの手柄話を聞いて、赤毛の少女は羨ましそうに声をあげた。
少女の名はカシュミ。水系カプモンのスペシャリストである。少なくとも、本人はそう主張している。
カシュミの反応に、サトスィは「へへっ」とまんざらでもなさそうに鼻のあたりをこする。
「まっ、オレ様はカプモンマスターを目指す男だからよ」
調子に乗ってサトスィは続ける。
「ミックラスをゲットするくらい朝飯前だね。それよりカシュミ、オマエはどうなんだよ。ここしばらく新しいカプモン、ゲットしてないじゃん。オレ様なんてもうこれで50匹くらいは集めたぜ? オマエは?」
「……まだ10匹よ。悪かったわね」
カシュミはむっとした顔つきになる。
「ハン? なによ、まだ10匹? あーあーあーあー」
と、サトスィは肩をすくめる。
「はっきり言って才能ないね。向いてないね。ブリーダーにでも転向したほうがいいんじゃねーの? あと、これオレ様の持論なんだけどさァ、オンナがカプモントレーナーになるなんてどだい無理なんだよね」
呑気に鼻の穴をほじりながら、サトスィは言い放つ。
もともとサトスィは、思慮に欠けるタイプである。
「あらそう?」
カシュミはにっこりと笑って言う。
その笑顔に隠された剣呑な気配に、バカなサトスィはまったく気付いていなかった。
「そうそう。カプモンは男のロマンだぜ。オンナの出る幕じゃねっつの」
ひょいとサトスィは、カシュミの胸を触る。
「こ、こらっ?!」
「しっかし胸ないよな〜カシュミ。ほんとに女なのか、オマエ? …なんてな」
調子に乗ったサトスィは言ってはならないことを言ってしまった。カシュミの抑えていた怒気が一挙に噴きあげる。
「こ──の──────バカサトスィ────!!」
カシュミはプロ野球のピッチャーよろしく、しなるような投球フォームで、手にしていたモンスターカプセルを思い切りサトスィの顔面に叩きつけた。
パコーン!!
小気味よい音を立ててカプセルは、クリーンヒットした。
「ふがっ……」
鼻血を垂らして、サトスィはその場にブッ倒れた。
コロン、と脇にカプセルが転がる。
「フンッ、いい気味だわ」
カシュミは吐き捨てるように言う。
「つーっ」
赤くなった鼻を押さえ、サトスィは起きあがろうとする。
「ちくしょ、なにしやがるんだカシュミ──」
そのときだった。
サトスィのそばに転がっていたモンスターカプセルが突如として閃光を発した。
「え!」
「なにっ?!」
サトスィとカシュミは同時に叫ぶ。
それはまさしくカプセルがカプモンを捕らえるときに発せられる閃光だった。
近くにカプモンの気配はない。考えられることはただ一つ。モンスターカプセルが誤作動を起こしているのだ。
「サトスィ、危ない!」
最初にその危険性に気付いたのは、カシュミのほうだった。
ぽかんとした顔をしていたサトスィだったが、カプセルから放たれる光が自分の体をのみこもうとしているのを目にして悲鳴をあげた。
「うわぁ〜〜〜〜〜っ!!」
モンスターカプセルがサトスィを捕らえようとしているのだ。どうやら、サトスィをモンスターの一種と誤認識してしまっているらしい。投げつけられたショックで内部のプログラムがおかしくなってしまったのだろう。カプセルは人間に危害を及ぼさないよう、二重三重の安全対策が施されているのだが、しょせんは人間の作ったものである。完全ということはない。
サトスィは跳ね起き、逃げようとした。
だがその行動はわずかに遅かった。一瞬早く、光の奔流がサトスィを呑み込む。サトスィの悲鳴がプッツリと途絶える。
やがて光がカプセルに吸い込まれてしまうと、その場にサトスィの姿はかげもかたちもなくなっていた。後には小さなカプセルが、ぽつんと転がっているだけである。
カシュミは真っ青になってカプセルを拾い上げた。
恐る恐る、カプセルのデータ表示窓に目をやる。通常、捕獲したモンスターのデータが表示されるはずの場所には、データ化けした記号列が並ぶだけだった。だが、この中にサトスィが入っているのは間違いない。
冷静に、思い返してみる。このカプセルはもともと空ではなかったはずだ。中には、ピッピンというカプモン(ロリ系カプモン。特殊能力は魅了)が入っていたはずである。
誤動作によってピッピンと一緒に詰め込まれてしまったサトスィがいまどんな状態でカプセル内に存在しているのか。あまり想像したくはないが、想像がつくような気もする。カシュミは頭を抱えた。
「これはちょっと……シャレになんないわよぉ」
それから数十分後。
カプセルからサトスィを解放しようとするカシュミの試みは全て徒労に終わった。
カプセルについている緊急用のリリースボタンを押しても、中に入ってるはずのサトスィやピッピンは一向に出てこない。もちろん、カプセルを振ったり叩いたり、挙げ句はなだめたりすかしたりしても効果なしである。
カシュミはため息をついた。
「オークィド博士なら、何とかできるのかしら……?」
「ペカッ」
はっとしてカシュミは振り返った。いつの間にか、野生のペカティウ(雷系カプモン。特技は電撃)が近づいていた。とっさに身構えるが、そのはずみにカシュミはカプセルを取り落としていた。
「ペカ?」
カプセルが物珍しいのか、ペカティウが寄ってくる。
「ペカ、ペカ、ペッカ〜」
しばらくカプセルを弄んでいたペカティウだったが、どういう気紛れか、不意に強烈な電撃をカプセルに浴びせた。
ドバババババッ
「ち、ちょっと!!」
「ペカペ〜♪」
満足した様子で、ペカティウは去っていく。
カシュミは、黒コゲになったカプセルを拾い上げた。
すると──
カプセルからまばゆい光が漏れ出た。
反射的にカシュミは目を細める。
パカッとカプセルが二つに割れ、中から何かが光に包まれて飛び出すのが見えた。それはちょうどサトスィくらいの大きさだった。
「サトスィ?」
カシュミは呼びかけた。
まぶしさに眩んでいた目がもとにもどるにつれ、サトスィの姿がはっきりと視界に映る。
「よかった、無事………………」
カシュミの言葉が途切れる。
「………………………………………………………?」
くっ、とカシュミは首を傾げた。
目の前にいる人物。それは、サトスィであってサトスィでなく、それでいてサトスィのようでもあった。
「フゥ〜。一時はどうなるかと思ったぜ。あとで覚えてろよ、カシュミ」
サトスィらしき人物は、プリプリと怒っているようだ。
「あの…………サトスィ?」
「なんだよ?」
「あ、やっぱり、サトスィなんだ」
「当たり前だろうが、ボケナス。オレ様がサトスィじゃなかったら誰がサトスィなんだ!!」
「プッ」
カシュミは吹き出しかけ、口を押さえる。その様子をサトスィらしき人物は怪訝そうに見やっていた。
「サトスィ。ちょっとこっち来なさいよ!」
「なんだよ、オイ?!」
「いいから、いいから」
強引にサトスィの手をとると、カシュミは少し行ったところにある泉までサトスィを引っ張っていった。
カシュミはサトスィを泉の岸辺に立たせると、水面を覗いてみるように、と言う。
不承不承、サトスィは従った。どういうわけか、カシュミに逆らえないのだった。
「あ、ザリガニめっけ!」
と、サトスィ。
「バカね。水面に映った姿を見なさいって言ってるのよ」
「なんだ、そんなことのためにオレ様をこんなとこへ……んん?!」
サトスィは目をこすると、もう一度水面に視線を落とした。
静かな水面は鏡のようにサトスィの姿を映している──はずなのだが。
そこに映っているサトスィは、サトスィであってサトスィでなく、それでいてサトスィのようでもあった。ひとつだけ、根本的に間違っていることがあるとすれば。それは。泉に映るサトスィがどう見ても女の子だということだった。
「なんじゃこりゃああああああああああっ?!」
と叫ぶサトスィの声も、どこか砂糖をまぶしたように甘ったるい響きをともなっている。
そばで、カシュミが腹を抱えて笑い転げていた。
「こ、これってどういうことだよ? オレ、どうなっちゃったんだよ?!」
振り向いてサトスィは、カシュミにとりすがった。
「アハハハハハハハハッ、傑作! サトスィ、あんたカプモンマスターになるのは断念したほうがいいわよ! オンナの出る幕じゃないんでしょう? ププッ」
どうやらカシュミの目にもサトスィが女の姿に見えるらしい。いや見えるとか見えないの問題ではなく、本当に、正真正銘女の体に変わってしまったらしい。細く頼りない感じのする自分の手足を見下ろして、サトスィは恐慌をきたしそうになる。
「カ、カシュミ〜」
「アハハハッ、サトスィったら、鼻にかかった声出しちゃって。でも、しょうがないか。ピッピンと融合しちゃってるんだもんね」
「えっ!」
目を剥くサトスィを前に、カシュミが説明をした。
要するに、モンスターカプセルに吸い込まれたサトスィは、既にカプセル内に存在していたカプモン・ピッピン(ロリ系カプモン。特殊能力は魅了)と混ざり合ってしまったらしいのだ。
言われてみれば、今のサトスィの姿は、完全な人間のものとはいえないようだった。体の各部にピッピンの特徴が出ている。サトスィの着ていた服は消えていて、いま体を覆っているのはピッピンのフサフサとした体毛を思わせる柔らかい毛皮の服(服なのか体の一部なのかはハッキリしない)だ。尾てい骨のあたりからは、シッポまで生えている。
何より、ピッピンと融合した影響で、サトスィは女になってしまったのだ。それも、ロリ系カプモンであるピッピンの特徴を受け継いで、妙に可愛らしい女の子に。顔つきも、サトスィとしての面影を残しつつ、間違えようもなく女の子のものになっている。ショートカットのあどけない美少女だ。
サトスィは改めて、泉の水面を覗き込んだ。
異様な格好はしているが、それでもドキッとしてしまうほどの美少女がそこにいる。
「これが……オレ?」
と、つぶやきサトスィは水面を見つめたまま、頬を赤らめた。
「いっぺん、死ね!」
バシャーン!
背後からカシュミに蹴りをくらわされ、サトスィは水中に頭から突っ込んだ。
あわてて岸に這い上がると、サトスィはカシュミに詰め寄った。
「殺す気かーっ!」
「ふふん。そんな可愛い声で怒鳴っても迫力ないわよ、サトスィちゃん」
今度は恥ずかしさのため、サトスィは頬を紅潮させた。
「オ…オレを元に戻せ!」
「そんなこと言われても無理よ。偶然の積み重ねでこうなっちゃったんだし」
「そんな! この格好を誰かに見られたらどうするんだ! オレ、身の破滅だよ」
サトスィは泣きそうな声で訴えた。
そのとき泉の反対側から声がした。
「サトスィ、いるか? 今日こそ決着をつけに来てやったぞ!」
声の主は、サトスィの幼なじみにして宿敵、スィゲルだった。
すたすたとスィゲルがこちらへやってくる。
「サトスィ。どこだ、出てこい」
「あ、サトスィならここよ」
と、無情にもカシュミはサトスィをスィゲルの前に押し出した。
早くも身の破滅が訪れようとしていた。
「サトスィ……おまえ……」
「や、やだよっ!!」
サトスィはスィゲルの視線を逃れようと駆け出した。
だがすぐにスィゲルに追いつかれ、肩を掴まれた。細い腕では、スィゲルをふりほどくことすらできなかった。
「待てよ。サトスィ、どうしたんだ、その格好……お前、ほんとうにサトスィなのか」
「痛い…離せよ、スィゲル……」
目に涙を浮かべて、サトスィは身をよじった。それが逆効果になるとも知らずに。
一瞬にしてスィゲルのスイッチが入った。
「うおおおおおおおおおおおお、好きじゃああああああああああ」
「きゃああああああああああああああああああああああああああああ」
ぼこっ!!
鈍い音があたりに響いたかと思うと、スィゲルは白目を剥いてそのまま前のめりに倒れた。後頭部に大きなコブが出来ている。カシュミが力任せに鉄パイプ(落ちていたらしい)で殴ったのだ。スィゲルの唇はいまだに「ちゅう」の形に突き出されている。
「ほんっとに男ってやつはどいつもこいつ……」
鼻息も荒く、カシュミは鉄パイプを投げ捨てた。
「サトスィ。あんたも無防備なのよ。あんな潤んだ瞳で見つめたら、相手の男が理性なくすに決まってるじゃない」
「だって……」
とつぶやくサトスィは、腰が抜けてその場にへたりこんでいる。
「しょうがないか。ピッピンの本能が混ざってるんだもんね。──おいで、サトスィ」
命令されるままに、サトスィはカシュミのもとに寄った。
「まったく。あんたって抜けてるわよね。カプモンマスターになろうって奴が自分自身カプモンになってどうすんのよ?」
「カシュミのせいだろう! ──って、オレ、カプモンになっちゃったの?」
「そうみたいよ?」
言うが早いかカシュミは空のモンスターカプセルを取り出し、サトスィに向けた。
嫌な予感を覚えたサトスィは逃げようとしたが、思うように足が動かない。
「やっぱりね。一度カプセルで捕獲されたカプモンは、飼い主から逃げられなくなるものね」
小悪魔のような表情を浮かべ、カシュミはカプセルをほうった。
次の瞬間、抵抗どころか声をあげる間もなく、サトスィはカプセルに吸い込まれていた。
「サトスィ、ゲットだぜ〜♪ …なんちゃって」
鼻歌まじりにカシュミはカプセルを弄ぶ。
「しばらく、あたしのカプモンとしてコキ使ってあげるわ、サトスィ。生意気なこと言った罰だと思うのね。反省しているようだったら、そのうちオークィド博士に頼んで元に戻してあげるから。……でも、サトスィったら可愛くなっちゃって。こんな可愛いカプモン持ってたら、ぜったいみんなに羨ましがられるよ、えへへっ」
不意にどこからか、バリバリという騒音が聞こえてきた。続いて、陽がかげったようにあたりが暗くなった。何事かと空を見上げると、カシュミの真上でヘリがホバリングしているのだった。
『世界の破壊を防ぐため……』
聞き覚えのある口上が流れてくる。
ヘリはラケット団のものだったのだ。ラケット団のズッコケ・コンビ、ムサァシとコズィロウが例によってサトスィたちをつけ回していたに違いない。
「その、新種カプモンを貰い受けにきたニョース」
ヘリからとぼけた声が聞こえたかと思うと、投網のようなものが落ちてきた。
カシュミは飛びすさって網を避けたが、手からこぼれ落ちたカプセルが網にかかってしまった。
「あっ!!」
と、カシュミは叫んだが、そのときにはもう手遅れだった。
投網は引き揚げられ、サトスィの入っているカプセルは、ラケット団の手に渡ってしまった。
「ホーホホホ。イイ感じ〜〜」
呆然とするカシュミを残して、ヘリは遠くの空に飛び去っていった。
「ジャリボーイ…って、今はガールかしらん?」
「み、見るなよ」
ラケット団の基地でカプセルから出されたサトスィは、ムサァシ、コズィロウと対面するはめになった。それも宿敵としてではなく、捕獲されたカプモンとして。
体を震わせているサトスィを見て、ムサァシは目を輝かせた。
「かっ……可愛い!! 可愛いわよ、ジャリボーイ!!」
コズィロウもうんうん、と頷く。
「可愛いってなんだよ! オ…オレは男だぞ!!」
甲高い声で、サトスィは叫んだ。が、ムサァシにしろコズィロウにしろ、全く聞いていなかった。
「前々から、こーゆー可愛いカプモン、欲しかったのよね〜」
「いやー良かったな、ムサァシ」
ムサァシは、ひょいとサトスィを抱きかかえた。
「あ〜ん、可愛いっ可愛いっ! これからヨロシクねっ、サトスィちゃん!」
ロリ系カプモンの本能で、ぬいぐるみのように可愛がられることに本能的な快感を覚えてしまうサトスィだったが、なんとか気力をふりしぼってムサァシの抱擁から抜け出した。
「死んでもオマエらラケット団のペットになんかなってやるもんかっ!」
「はいはい。ちょっと口動かさないでね」
と、ムサァシがサトスィの唇にピンク色のリップを塗り出す。
「あら、この色、似合ってるわサトスィちゃん」
「似合ってる?」
サトスィは恥ずかしそうに俯いた。
「そんな…そんなわけないだろ……オレ、男なのに……」
ぷっちん。
その仕草によって、コズィロウのスイッチが入ってしまった。
「うおおおおおおおお、もとがジャリボーイでも知ったことか、好きじゃあああああああああああああ」
「きゃああああ、また────────!!」
「こらっコズィロウ、サトスィちゃんはアタシのものよ──」
二人の間でもみくちゃにされながら、サトスィは大声を張り上げた。
「ぜったい男に戻っちゃる〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
それから、一カ月後──。
「サトスィちゃん。明日は一緒にショッピング行きましょうね」
ムサァシはとろけそうな表情で誘ってくる。
「そりゃないだろう。明日はオレと映画を見に行く約束じゃないか、サトスィ」
コズィロウが抗議の声をあげた。
サトスィは、二人を等分に見渡す。
「えへへっ。どうしよっかな〜。う〜んとね、決めた。今日一日いっぱいサトスィに優しくしてくれたほうと一緒にいってあげるよ」
そう言って、サトスィは悪戯っぽくウィンクをしてみせた。首に巻いたブルーのリボンがひらひらと踊る。サトスィが自分で選んでつけたアクセサリーだ。
そこにいるのは、サトスィであってサトスィでなく、それでいてサトスィのようでもあるひとりの美少女でありカプモンだった。いまのサトスィは、ピッピンが持っていた“魅了”の力も自由自在に使いこなせる。
可愛いって得だよね。
サトスィは心の中でぺろっと舌を出した。
ムサァシもコズィロウも、サトスィの思うがままだ。二人にはいずれカプモンリーグに出て、カプモンマスターを目指してもらおうと密かに計画を練っている。もちろん、決勝戦に美少女カプモンとして出場し、全世界の注目を浴びるのはサトスィだ。
──女の子は、やめられません。
「ん? なにか言ったサトスィちゃん?」
「ううん。気のせいでしょ?」
そう言って、サトスィは可笑しそうにクスクスと笑いをもらした。
疑問を持とうが持つまいが、現にサトスィは女の子なのだ。
女の子は女の子。それだけ分かれば、日々の暮らしに支障はない。
そして今日も今日とて、少年少女の冒険は続く。
(やがて経験を積んだサトスィは進化してセクシー系カプモン・サトスィーラになったりするのだが、それはまた別なお話)
というわけで、ひとまずおしまい。
あとがき
ちょっとした気分転換のつもりで書いてたはずなのに、結局ひと晩徹夜して書き上げることになってしまいました。最初は、ごく短い(一画面内に収まるような)一発ネタのつもりだったんですが。
まあ出来ちゃったものは仕方ないですね。
えー、読めば分かる人は分かるし分からない人は分からないと思いますが、テレビでやってる「ポケモン」のパロディです。ひょえっ、許してニンテンさん。
ひとまずおしまいとか言ってますが、続きを書くつもりはこれっぽっちもあ〜りません。やり逃げです。
ちなみに、ポケモン本編でサトシと旅をしているブリーダー志望の目の細い少年(ヤクモ、アイタカタヨ)はこのお話に登場しません。なぜかというと、彼の名前をド忘れしてしまったからです。がーん。単純な理由でした。
サトシの性格が極悪になってますが、仕様ですから気にしないように。最初の構想では、シングルベッドにカスミが泣き腫らした目で横になってて、その隣でサトシがフーッと煙草を吸ってるシーンから始める予定でした。なんでやねん。サトシ、チンピラか?!
このお話では、サトシがピッピと融合して美少女になってしまったという設定だと思うと分かりやすいでしょう(そうか?)。ピッピってのはピンク色でメスっぽいポケモンです(ほんとはオスもいるのだろうか?)。実はピッピよりも、上田祐司演じる細目少年が本編の何話かで美人の理容師さん(違ったかも)から譲り受けた九尾の狐みたいなポケモンと融合することにしたかったんですが、例によってヤツの名前が分かりませんでした。まあ本作に出てくる「ピッピン」はネコマタみたいなモンスターなんだと適当に自分を納得させておいて下さい。融合後のビジュアルは、ネコ娘的なかんじでしょうか。うん、そうですね、デ・ジ・キャラットちゃんみたいな姿ということにするにょん。それ、ぜんぜんサトシちゃうやん。
そんなこんなで、久々のアニパロでした。それではまた来年。バハーイ。がくぅっ。(王大人、死亡確認)
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