戻る

カヲルの事情 2

by WATARU 1024




 このお話は「二人のカヲル  一.あいつの妹」のカヲルサイドの事情を描いたものです。「二人のカヲル」の少なくとも第一話は読んでおいていただくと、解りやすいと思います。それに、もしかしたらその方が面白いかもしれません。

[「二人のカヲル」へ]




 あたしは意を決して……、今日のあたしはなんだか、意を決してばかりいる。こんなに元気なのはやっぱり、浩ちゃんのせいだと思う。
 「はーい。あのー……、そのかわりといっては何だけど、これからデートしてくれないかな?」
 「え?」
 浩ちゃんはのんきに答えてくれる。
 自分でも、頬が真っ赤になって行くのが解った。










 一.あたし (2)


 「高二って言ってたよね」
 「同い年でしょ? 浩ちゃんも高二だよね、浪人してれば別だけど?」
 「もちろん。学校はどこ?オレはさ」
 彼はここから割と近い、公立で共学の学校名を告げた。詳しくは知らないけど、割とスポーツも盛んな、進学校だった。
 共学かー。ちょっとキツイかなー。
 「あそこ共学だよね、いいなー。あたしは女子高」
 六年制で有名な学校名を告げた。方角は違うけど、やはりここからは近い。ま、有名と言っても、受験生とその親以外では、近所の人くらいと思うけど。
 あたし達は、オフィス街の方を歩きながら、いろいろ話していた。このあたりは、駅に近い側を除くと、それほど混雑していない。街灯がかなり明るいので、歩くにはちょうどよい。
 「あそこって中学からだよね。じゃ、ずっと女子高?」
 「あたしは高校からの転入組、少ないけど結構いるよ。中学は普通の公立だったの」
 「じゃぁ、頭いいんだ」
 「そうでもないなー、中学の時って、あたし勉強しかすること無かったから。頭は普通じゃないかな」
 ほんの少し、中学生の頃を思い浮かべる。憂鬱な気分が当たり前で、今とは全然違う、暗い生活してた。元気にしようと思ったのは、浩ちゃんのお蔭なんだよね。本人は全然知らないけど。
 「浩ちゃんこそ、結構いいんでしょ」
 「小学生までだね、オレの場合。今はただの人ってヤツ」
 「学校はイイとこじゃない?」
 「ま、ここらじゃ、中の上かな。でもおれ、そこで中の下だぜ」
 「さてはサボってるなー」
 「ま、部活やら何やら、忙しかったし、まだ高二だろ。その辺は適当に」
 「部活ってなにやってるの?」
 「うーん、それは秘密です」
 「え、なんで? 教えてよ」
 「少しぐらい秘密があってもイイだろ」
 「そう言われると……」
 「あ、ゴメン」
 「ううん、いいよ。こっちこそ」
 もう、そんな話をしても、それほど構えなくて済む。約束したから、少し気は楽。
 彼も気を取り直して別の話題をふってきた。
 「君はさあ、オレのこと誤解してない?」
 「おまえでいいよ、もう、友達なんだから」
 友達というと、まだ、ちょっと、照れるよね。
 「だから、兄貴からいいことばっか、吹き込まれてるとか」
 「そんなことないよ」
 そんなことは、ない。ほんとだよ。
 あたしは、浩ちゃんが悪ガキだったことを知っている。
 ちらっと、例を挙げると、たちまち、恥ずかしそうにして、向こうを向いてしまう。
 そんなところもいい感じだな、うふふふ。思った通り、ううん、思ってた以上の男の子だ。
 「なんか、想像した通りに成長してたんで、ちょっと感動したんだ」
 彼が向こうを向いているうちに、小声でそっと呟いた。言った途端、頬が熱くなった。今日はなんか変だ。
 「え? 今なんて……」
 「何でもない!」
 話しを続けているうちに、あたしは一つのことが、とても気になりだしてきた。気になり始めると、何を言っても何を聞いても、そのことが頭を離れなくて、上の空になってきた。
 えーい、毒を食らわば皿までだぜぃ! って、これはクラスの子の口癖。女子高の友達って、結構がらっぱちが多い(友人その一談:意味不明確。態度が野蛮なことをいうらしい)。女ばっかりだと、どうしてもそうなるんだろうな。あの子中学からだし。共学の子ってどうなんだろ。中学の時とはまた違うんだろうなぁ。
 えい、聞いてしまえ!
 「浩ちゃん、今、付き合っている彼女とかいるの? 好きな人とかは?」
 心臓がドキドキしている。緊張したせいか、顔が強ばった感じ。あー、やっぱり、いきなり露骨な質問! するんじゃなかったかも。返事を聞くまでが長いよー。
 「付き合ってる彼女なんて居ないよ。そう言う、おまえは、彼氏とかいるの?」
 えっ、て、質問を返されて、うろたえる。
 いる訳ないよ、そんなの。でも聞き返すのが当たり前か。あたし、はっきり何も言ってないんだから。
 「いたらこんなとこ、いないっショー、へへ。じゃあ好きな人はいるの?」
 慌てて答えて、つい変なことを言ってしまった。緊張する。緊張してる。
 「んー、好きになりかけてる娘はいるかも」
 暢気に答える浩ちゃん。あたしは、その言葉を頭に入れるのに、ちょっと余計に掛かってる。
 心臓が止まった。
 「え、いるの!」
 思わず立ち止まって、組んでいた腕にしがみついてしまった。浩ちゃんの方に顔を向ける。
 半歩遅れて浩ちゃんの足が止まり、彼もあたしの方を見た。眼が合う。こんな近くで眼が合うと、彼の顔しか見えなくなる。
 「いるの?」 あたしがもう一度小声で聞くと、彼は眼を伏せた。彼の顔がすいっと近づいてきて、唇が額に触れた。
 えっ?
 「うん、今日出来た」
 頭が真っ白になった。続いて、眼に飛び込んでくる、浩ちゃんの顔。
 えーっ?
 何が起こったの?
 浩ちゃん、今なんて言ったの?
 少しづつ頭の中で、意味が形になっていった。心臓が生き返り、全力で動き始める。
 頬が熱くなっていくのが解る。突然あたしは、自分が浩ちゃんの腕の中にいることに気づいた。
 眼のすぐ前に、ほんの少し頬の赤い男の人の顔があった。
 あたしは嬉しさと羞ずかしさで、とても彼の顔が見られなくなって。
 身体を放すとそのまま、彼に背を向ける。顔は、火がついたようになっているし。心臓は全力疾走直後だし。気が付いたら、息まで荒くなっていた。ちょっとの間、息を止めていたみたい。右手を胸に当てて気持ちを少しでも落ち着かせる。息が落ち着いてくると。今度は足下がふわふわしてきた。
 あたしは今どこにいるんだろう?
 そんな夢見心地の気分に包まれていながら。……でも……。あたしはちょっと気になってしまった。いやじゃないけど、ちょっと羞ずかしいじゃない。
 「大丈夫?」
 浩ちゃんが声を掛ける。あたしはもっと羞ずかしくなったけど、振り返って、彼の顔を見た。
 少し心配そうに、あたしと眼を合わせる。まだこんなに近くにいる。手を伸ばせば届く距離。
 「浩ちゃんて、手が早いんだ」
 あたしがそう言うと、彼は困ったような顔で、少し顔を赤らめた。
 自分の頬に手をやる。あたしの頬はとても熱かった。頬だけではない、多分顔全体が赤い。
 「それは誤解だよ。オレはおまえだからしたんだし、おまえじゃなかったら絶対しない」
 「本当?」
 「ああ、絶対本当。それより、おまえの方は好きなやつとかはいないのか?」
 「いるよ、もちろん」
 ふふ、意地悪な言い方かな。解ってると思うけど。さっきから、バレバレだものね。
 あたしは彼の胸に、倒れ込むように抱きついた。
 「浩ちゃん」
 口に出すと、もう震え声だった。

 思った以上に素敵に成長していた浩ちゃんは、意外なまでの手の早さで、あたしを驚かせた。
 本人は相手があたしだからと、いってたけど。何だか心配になって、問いつめたら、キスまでは高一の時にしたと白状した。ファーストキスがいつかは聞き損ねたけど、あまり具体的なことは聞きたくないし。
 でも済んでるんだ。女の子も平気でいじめていた、あの浩ちゃんが……。
 何となく面白くない話。あたしって嫉妬深いのかなー。ちょっと前までは、「会えるだけで」とか考えていたような気がする。どんどん、欲張りになるのかな。ちょっと怖い。

 ファーストキスまではあっという間だった。
 夜景を見ながら並んで座っていて。
 「ちょっと目をつぶって」
 浩ちゃんがそう言って、私のことを見つめると、頭の芯までふわふわになって。
 「えっ、な、なに?」
 そう聞き返しながら、言われた通りに、眼をつぶる。でも、彼の気持ちは解った。あたしも、もうすっかりそのつもりだったんだと思う。はっきり自分では解らないけど。眼を閉じて、彼のことを待った。
 唇がそっと触れる。ゆっくりと彼の唇の感触が、あたしの唇に重なっていく。
 さっきの、予想もしなかった時の、突然のキスの様な衝撃はなかった。ただ、このまま気が遠くなりそう。
 唇が離れるのが惜しくなっていた。自分の気持ちがちょっと羞ずかしい。
 あたしは浩ちゃんにもっと強くしがみつきながら言った。
 「浩ちゃん、やっぱり手が早い……」
 耳元に彼が口を近づけた。
 「好きになりかけてるって言ったけど、訂正。……ずっと前から、好きだったみたいに、好きだ」

 今日やっと再会した男の子、あたしを知らなかった男の子と、あたしは、初めてのキスをした。

 「あっ、そうだ、あたしのアドレス」
 浩ちゃんのだけ聞いておいて、自分のアドレスを伝えてなかった。
 「今聞こうと思ってた」
 あたしは、駅名を言って、ネームカードを渡した。めったに使わないけど、持っていてよかった。カードにはケイタイの番号だけが入っているので、渡す前に住所を書き加えた。
 「なんだ、通り道だ。送ってくよ」
 「いいよ、送らなくて。今日はこのまま帰るから」
 今日は送ってもらう訳には行かない。これ以上一緒にいたら、離れられなくなりそうだ。送ってもらったら、少しぐらい家に上がってもらいたくなるし。あ、でも部屋、散らかってる。
 そうじゃなくて。
 「浩ちゃん、快速?」
 「ああ、カヲルは?」
 「あたしは各駅停車」
 「おれも、各停で行くよ」
 「ごめん、今日はやめといて」
 「どうして? 送ってくよ」
 「ここまでにしよう、お願い」
 ちょっと、押し問答になってしまった。
 あたしだって、事情がなければ送って欲しいですよ。
 何度か、言い合った末のあたしの、
 「お願い!」でやっと彼が折れてくれた。
 「改札も別々で、入ろ。あたしがホームにいなくなってから、あがって」
 これは単に今の気分。ホームで別れたら、泣いてしまいそう。そう言うのはちょっと苦手。
 「了解」
 彼は、もう呆れているだろう。こんな勝手な奴、と思ってるのかなー。
 「次は各駅停車だから、あたしが先に行くね」
 まだ少しだけ、余裕がある。
 「解った。じゃあ、オレのお願いも聞いて欲しいな」
 「なに?」
 何だろうと思って、ちょっと、胸がドキドキしたけど、彼の「お願い」は呼び名のことだった。やっぱり、と言うか当たり前と言うか、高校生の男の子には、女の子に「浩ちゃん」と呼ばれるのはちょっと問題らしい。名前か名字でと言うから、名前がイイかな。
 「どっちでもいいよ」
 「じゃあ、浩樹……君?」
 あたしにとって、浩ちゃんはずっと浩ちゃんで、それが自然だったから、違う呼び名は何だか照れ臭い。何でもないことのはずなのに、顔がちょっと熱い。
 「呼び捨てでもいいんだけど」
 さすがに、呼び捨てにするのは勇気がいる。いくら本人がそれでいいと言っても、浩ちゃんを「浩樹」、とは呼びにくい。
 「うん、いいよ、じゃ浩樹君て呼ぶからね」
 彼は笑って、首肯いた。オーケーということだ
 ちょうど電車に乗るのに、いい時間になった。
 「ああ、じゃ、また。電話待ってるから」
 「うん、必ずする。じゃ、バイバイ、浩樹君」
 あたしは彼に背を向けると、改札を通り抜けた。
 一度振り返ると、笑って見送っていた。あたしは手を振り、口だけで「バイバイ」とやってから、向きを変えて、階段を上った。

 浩ちゃん、浩樹君、宮本浩樹君。
 電車に揺られながら、あたしは口の中で、名前を並べてみる。
 ビックリするくらい、手が早い、魅力的な男の子。
 一人でいると、唇の感触がよみがえる。
 ダメダメ、気を落ち着けて。
 あたしは窓の外を見る。夜の街は真っ暗だ。窓ガラスにあたしが写っている。
 これからは、いつも、浩樹君と呼ばなきゃね。
 小学生のカヲル、浩樹君はカッコ好くなってたよ。
 あたしは、窓の影にささやいた。



 幕間1

 「ただいまー」
 ドアを開けると、すぐ祖母が出て来た。
 「おや、遅かったね」
 「ごめんなさい、友達につきあってたら、遅くなっちゃった」
 あたしは靴を脱ぐと、自分の部屋に入りながら答えた。あたしの部屋は、リヴィングやダイニングより玄関に近いので、こういうとき便利だ。
 「遅くなるようなら電話しなさい、いつも言ってるだろう」
 廊下の奥、リヴィングの方から、祖父の声が聞こえた。それほど怒っている声ではない。
 「ご飯は?」
 「食べまーす。でも、その前にシャワー浴びていい?」
 「早くしなよ」
 「はーい」
 「返事はいいんだけどねぇ」
 制服を脱ぐ間、祖母が何かと聞いてくる。あたしはそれに適当に答えながら、言い訳を考える。午後九時。遅すぎるわけではないが、学校帰りにしてはちょっと遅い。いつもは、寄り道をしていても、午後八時前後には帰ってきているのだ。もっとも、友達と出かけるからと前もって言っておいて遅くなることはある。祖父母は心配性だから、結構うるさい。
 ま、友達の買い物に急に付き合うことになった、と言って変な時間じゃないからイイか。
 「おばあちゃんたち、もうご飯食べたんでしょ」
 「とっくの昔」
 安心して、あたしはシャワーを浴びることにした。
 あたしはファミリータイプのマンションに祖父母と三人で暮らしている。
 祖父は、合理的で楽だと言うけど、祖母は少し不満らしい。
 洗濯機に下着を放り込むと浴室に入る。放っておくと後で確実に祖母が怒るから、気をつけないといけない。しかも今日はちょっと。
 寝る前に始末しておくと決心する。
 一瞬、始まっちゃったかと思ったくらいなんだけど。そういうものなのか。
 裸でぼうっとしていたら、さすがにくしゃみが出る。それを聞きつけて、祖母が声を掛けてきた。
 くしゃみぐらい気にしなくてもいいんだけどな。あたしは思考を中断して、とにかく熱いシャワーを浴びた。

 さっぱりして部屋着に着替え、ダイニングに出るともうあたしの晩ご飯が出来ていた。
 「あ、ありがと。でも自分でやるのに」
 「後片付けはお願いね」
 「はーい」
 「唇どうかしたの」
 どきっ。
 「えっ? なんで?」
 「さっきからやけに気にしてるみたいだからね」
 言われて気づくと、あたしは自分の唇に手をやっていた。
 祖母は妙に鋭い人で、時々やりにくい。女の年の功、侮り難し。
 「あー、ちょっと最近荒れちゃったかなと思って、気になってんの」
 「そう。女の子は肌のお手入れに気をつけなくちゃね」
 「いただきまーす」
 「はい、どうぞ」
 
 台所の片づけを終えると、十時半を少し回っていた。祖父母はそろそろ寝ているか寝る準備をしているところ。
 少し遅くなったので迷ったけれど、あたしは受話器をとった。
 「もしもし、あ、お義母さん? カヲルです。」
 受話器の向こうから、明るい声が応えた。
 『カヲルさん? あら、こんばんは、どうしたの今日は、元気にしてる?』
 義母、本来は叔母、母方の叔父の奥さんで、現在の義理の母。とてもおおらかで元気な人だから、話をしているとこちらも元気になれる人だ。あたしにとっては母というより、頼れる先輩という感じ。
 「うん、元気にしてるよ。叔父さん、じゃなくて、お義父さんは元気?」
 『あら、ええ、元気よ。あたしには言ってくれないの?』
 「お義母さんは、元気でしょ、声でわかるよ、今大丈夫?」
 『大丈夫よ。あたしは元気。で、どうしたの、何か、変わったことあった?』
 「うん、あのね、えーと、今日ね、昔の友達に初めてあった」
 『あら、そう。そうね、どう? どんな感じ?』
 「どんな感じって?」
 『すぐ解った?』
 「双子の妹って言ったらすぐ信じてた。最初、親戚か何かと思ったって」
 『そりゃそうよね、でお友達の方は変わってなかった?』
 「うん、結構変わってた、大きくなってたし」
 『男の子?』
 「うん」
 『男の子かー、あのくらいって、変わるんだよね、すっかり。羨ましかった?』
 「少しね、でもそんなには。」
 『女の子はもうあんまり、顔が変わったりしないからなー、年はとるけど』
 「お義母さん若いでしょ」
 『お世辞はいいわよ、相手も高校生でしょ? ナンパされなかった』
 「えーとー……、された……。っていうか、そのー、したのかも」
 『なにそれ。あー!、もしかして相手って浩ちゃん? そうなの?』
 「うん」
 勘がいいなぁ。義母はまだ年の功って年でもないのに。
 『そうかー、無事会えたんだ。良かったね』
 「うん、それでね、ちょっと話したいことがあって。」
 『あら、続きがあるの、なになに? いくとこまでいっちゃった?』
 「そんな訳ないでしょ! もう……、あの、実は浩……樹君と一つ約束しちゃったんだ。カヲルと会わせてもいいよって。つまり、双子の兄の方のカヲルと会わせる約束をしたんだけど……」
 『えーと? どういう意味かしら?』
 「絶対会わせるって言ったわけじゃないんだけど……、会わないなら理由もいるし。あのね、話してたら、あたしも小学生の男の子だったカヲルに会いたくなって……」
 『ふむふむ、なーるほど、それでヘルプコールとなったわけですか。詳しく説明してごらん』

 『ふーん、それにしても浩ちゃんて結構やるわね。ほとんど初対面の筈でしょ。それでそこまで行くとは。いくら初心な娘が尻尾ふって涎たらしてたとしてもよ。高校生って侮りがたいわねー』
 「なにそれ、あたし涎なんか垂らしてません」
 うーん、尻尾は振ってたかも知れない……。
 『垂れてる、タれてる』
 「もう!」
 『それとも、結構遊んでるとか?』
 「……違うと思います」
 『今の間が、カヲルさんの疑惑を物語っていますねー』
 「お義母さん!」
 『冗談はさておき、そうね、一度だけ会わせてあげたら? ちょっと冒険かも知れないけど』
 「う……ん、やっぱりそうしたほうがイイかな……」
 さらに数十分話した後、あたしは電話を切った。
 義母は最後に、
 「たまには早坂のうちにも連絡するのよ、じゃね、おやすみ」
 そう言っていた。



[UP] [TOP] [幕間1]
[PREV「カヲルの事情1」へ] [NEXT「カヲルの事情3」へ]


戻る


□ 感想はこちらに □