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八重洲様がみてる

作:BAF






一之瀬誠、16歳。ちょっと背の低い事を除けば、どこにでもいる普通の少年だった。
彼は基本的に善人だったし、硬派を気取っているところもあった。ただ少し短気なところと言葉足らずなところが欠点といえるかもしれない少年であった。
彼はその性格が災いしたのかある少女と運命的な出会いをする事になる。
これは、そこから始まるお話である。

 
「ちょっとアンタ。ここ男子校だぜ」
 白く優美な学び舎の廊下に似つかわしくない厳しい口調の声が響いた。
「ええ、知っておりますがそれが何か?」
 黒髪をふわりと翻し振り返った少女は、満面の笑みと優しい言葉を少年に投げかけた。
「・・・。知っておりますがじゃねえ!ここは女の来るところじゃねえって言ってるんだ。とっとと帰んな!」
 予想以上に美しかった少女の顔に一瞬目を奪われ毒気を抜かれそうになったが生来の短気さがそれを上回り語気を荒げる結果になった。
 別に彼は女嫌いというわけではない。ただ、女に飢えた男の怖さを知っているために出た言葉なのだ。彼の口調からそれを読み取るのは難しいだろうが。
「困りましたわね・・・。こう見えても私、ここの生徒なんですけれど」
 口元に指をやり本当に困ったという顔になる。
「は?何言ってるんだ。ここが共学になったなんて話聞いてねえぞ」
 詰め寄ろうとする少年。だがそれは意外な方向からかけられた声によって遮られた。
「誠、こんなところに居たのかよ。って・・・あ、高宮先輩おはようございます」
 スポーツマンタイプの短髪の少年が、二人の前に駆け寄ってきて少女の姿を見止めるなりシャチホコばりお辞儀をした。
「ん、真一こいつの事知ってるのか?」
「ば、馬鹿野郎!高宮先輩になんて口聞くんだ。すみません先輩。こいつ高等部からの編入生なもので」
 そう言って、誠の頭をわしづかみにして無理やり頭を下げさせた。
「やはりそうでしたの。私の事知らないらしいのでそうではないかと思っていたのだけど。そう言うことでしたら仕方ないですものね」
「はい!申し訳ありませんでした。こいつにはよく言い聞かせておきますので今日のところは・・・」
「ちょっと待て!先輩だかなんだか知らねーが何で俺が頭を下げなきゃいけねーんだよ!」
 頭を押さえつける真一の腕を振り払い、高宮と呼ばれた少女をにらみつけた。
「貴方、誠君でしたっけ。ふふふ、可愛い子ね。決めました今年のスールは貴方にするわ。ついていらっしゃい」
 そう言って、誠の手を引いて歩き出した。予想外に力が強い。手を引かれながら後ろを見ると、真一が頭を抱えこちらを見ていた。「だから言ったのに・・・」そんな声が聞こえてきそうな表情だった。

 
一日後
「それでお前そんな姿になっちまったのか」
 放課後、一年D組の一之瀬誠の席にクラスメートの大半が集まってきていた。
「うっ、うるせーな。朝、気がついたらこんな格好だったんだよ!」
 ベリーショートの、櫛を入れていないぼさぼさの髪に、薄茶色のセーラーをきた少女がぼやく。
 そう本当に気付いたらと言う感じであった。実際、昨日の事は良く覚えていない。今日目が覚めたら保健室のベッドの上にこの格好で寝ていた。「調子はどうだ。なんならここで寝ていてもいいが?」 そんな言葉をかけられたのだが、それがなんとなく嫌だった。
 たかが姿が変わったぐらいで授業を休むというのが癪に障った。
 だからどんな姿だろうと『俺は俺だ!』と言い聞かせて、教室に向かった。
 さすがにセーラー服は恥ずかしかったが、それ以外の衣類はもうなかったため仕方ないとあきらめた。
 幸いといって良いかどうか、クラスメートはそれほど動ぜず真琴を迎え入れた。どうやら真一が皆に昨日の出来事を話していたらしい。
 だがやはり興味はあったのか放課後になったとたん真琴の前に人だかりができたのだった。
「しっかし、お前がスールに選ばれるなんてな」
「いや、この制度には素行不良を正す意味合いもあると言うから、ある意味妥当なのかもな」
「なんだと!」
 真琴が怒りに顔を真っ赤にして立ち上がる。
「まあまあ、選ばれたものは仕方がないじゃないか。三年間頑張れよ」
 一番前で会話を聞いていた真一がそんな風に言う。
「・・・三年もこのままなのか?それにスール制って何なんだよ」
「何だお前そんなことも知らなかったのか。しょうがねーな教えてやるよ。いいか、この学校って絶海の孤島にあるだろ。するとだな、どうしても女性に会う機会なんて少なくなるだろ。そのせいで、男同士でカップルができたりするらしいんだよ」
 真一が一瞬あきれたような顔をしながらも話し始めた。
「うへえ、マジで」
「俺はそうならないぞ」
 背後の野次馬達が、自分勝手に騒いでいる。
「まあ先輩達もまずいと思ったんだろうな。それで生徒会の中にある部署を作ってこれに対応しようと考えたんだ」
「ようは、女性に対するあこがれを失わなければいいんだから、周りに女性が居ればいいわけだろ。そこで、各学年に三人女装させて学校に通ってもらうことにしたんだ」
「でもこれ、女装とかじゃなくて完全に・・・」
 誠が、スカートのすそを持ち上げ恥ずかしそうに言う。
「ああ、判ってるよ。この話には続きがあるんだ。じつはこの女装ってのはすぐに失敗したらしい。なんと言っても中身は男だし、カップル化を増長させただけだったらしい」
「でも、この学校を卒業したOBがある時、自分の発明した機械を学校に寄付したらしいんだよ。それが性転換装置だったんだ」
「この装置は費用が掛かるし、昔からの慣例の事もあって毎年3人だけ女性に変えることができるらしいんだ。」
「でも、ただ姿を変えただけじゃ全く女らしくないだろ。俺だってこんなだし」
 そう言いながらぼさぼさの頭を掻いた。
「うん、だからそのためのスール制なんだよ。スールって言うのはフランス語で姉妹の事。この機械で女性になった者は、二年生になると一年の中から一人を選んでその一人を女性らしく振舞えるように卒業まで指導していくんだ。そう姉妹のようにね。それがスール制」
「それじゃあ、なにか。あの高宮って先輩も・・・」
「そうだよ。2年A組の高宮麗先輩。去年選ばれたスールさ」
「じゃあ俺これから三年間この姿のまま、あの先輩の指導を受ける羽目になるのか」
 そう言って、机の上に足を投げ出しため息をつく真琴。
 ゴクリッ。周りからつばを飲み込む音が聞こえ、真琴の背中に悪寒が走る。
 あたりを見回すと、すべての視線が自分の履いているスカートの中に注がれていた。
「うわ!」
 あわててスカートを押さえ空中であぐらを組むがバランスを崩して椅子から転げ落ちてしまった。
「痛たたた」
「なんです。そのはしたない格好は」
 突然聞こえた女性の声に顔をあげるとそこには高宮麗の姿。
「た、高宮!」
 まくれあがったスカートを直しながら立ち上がる真琴。
「違うでしょ。お姉さまでしょ。真琴行きますよ」
 麗はあくまで丁寧に真琴をたしなめた。
「何がお姉様だ!俺をこんな体にしやがっ・・・」
そこまで言ったとき今朝、自分をこんな姿に変えた保険医が言っていた言葉が不意に思い出された。『彼女に逆らうと男に戻れないから』
真琴はあわてて姿勢を正した。
「・・・す、すみませんでしたお姉さま。ところでどこへ行くのでしょうか」
「今日から貴方の住む場所に案内します。」
「え、俺・・・いえ、私。寮に部屋が有りますけど」
 言っている意味が判らず首を傾げる。
「貴方、男性との相部屋が良いと言うのですか?」
「うっ、それは嫌な気が・・・」
 ちょっと嫌なものを想像し冷や汗が出た。
「それでは皆様、真琴はお借りしていくわね。それではごきげんよう」
 麗が優雅に会釈をし、くるりと向きを変えると廊下に向かって歩き出す。
「じゃ、そう言うことで」
 しゅたっと手を挙げ麗について行こうとする。
「真琴!しっかり挨拶なさい」
 振り向きざま真琴に向かい叱責が飛ぶ。
「ご、ごきげんよう」
 そう言うと、教室を出た。

 校門を出て、少し歩くといつもは気にも留めなかった分かれ道の前に差し掛かった。
一つは男子寮に続く道。そしてもう一つは坂を登り山に向かう道である。
麗は迷わず坂を登っていく。真琴もそれに続く。
(スカートってなんか歩きづらいよな)
 スカートの裾をつまんでそんな事を考える。
(胸だってなんとなく揺れるし・・・)
セーラー服の胸元をつまみ、中を覗き込む。薄桃色のブラが見えた。
それを見た瞬間なにか見てはいけない物を見た気になり、あわてて胸元を正した。
照れ隠しにあたりを見回すと不意に麗と目が合った。
気付かぬうちに歩みを止め真琴の行動を一部始終見ていたらしい。
(一体何はしたない事しているの?)
 その目がそんな風に訴えかけていた。
 別に睨まれたわけではないのだが非常に気まずかった。
 少し間があって無言のまま、麗がまた歩き始めた。
(怒られたほうが気が楽だったかも)
 真琴の口からため息が漏れる。ふと気が付けばそんなに遠くないところにちょっとしたお屋敷が見えてきた。
午後の光に白塗りの壁と、それに絡まる蔦の緑が美しいコントラストを作っている。
庭にはご丁寧にテラスまであり、ここにもまた白塗りの椅子と丸テーブルが置かれていた。
「うわ、すごいな」
 思わず真琴の口から感嘆が漏れる。
「あそこが、私達の住む女子寮。姫百合寮。今から貴方をお姉さま方に紹介するのだから、言葉づかいしっかりしなさいね」
「お、お姉さま方・・・?」
 真琴が疑問の声を挙げたが麗はそれに答えず歩き続ける。
 坂を上りきり、庭に入ると同時に屋敷の扉が開き誰かが出てきた。
「あら、綾香お姉さまだわ」
 麗の顔がほころぶ。見れば、いかにも少女趣味なフリルいっぱいのワンピースを着たが女性が、ティーセットを載せたお盆を持ちテラスに向かっていた。
「綾香お姉さま。ただいま帰りました」
「あら、麗さん。お帰りなさい。今日は少し遅かったのね。いつもはティータイムまでには戻るのに」
「すみません。少し寄り道をしていたものですから」
「麗さん。貴方の後ろにいる方はどなたかしら?」
「お姉さま。この子は先日お話した。私の妹、真琴です」
「真琴。こちらは私の姉、蔵越綾香お姉様。貴方の姉でもあるのだからしっかり挨拶なさい」
「え、あ、はい俺じゃなくて、わ、私、一年D組の一ノ瀬真琴です。よろしくお願いします」
「そう。貴方が麗の・・・。クスクス」
「お姉さま。いきなりお笑いになるなんて失礼ですわ」
「あら、ごめんなさい。でも別に真琴さんを笑ったわけではないのよ。一年前あんなにじゃじゃ馬だった貴方が、もう妹を指導するのかと思ったら、つい・・・クスクス」
 また思い出したのだろう。顔は伏せたが肩が震えている。
「嫌ですわお姉様ったら」
 麗が顔を真っ赤にしてそっぽを向いた。
「真琴さんご安心なさい。麗とその姉である私が貴方を立派な淑女にしてあげますからね」
 にっこりと屈託のない笑顔を向ける綾香。
「うっ、それはちょっと・・・」
 真琴は苦笑するしかなかった。
「うふふ、まあいいわ。お二人ともお座りなさい。ティータイムにしましょう」
 午後のゆっくりとした時間が流れる。
今まで、のんびりした時間など過ごしたことのない真琴は落ち着かずあたりを見回すしかなかった。
(ここは絶対自分の居場所じゃねえ)
 心の中でそう思いながらもそれを口に出す事はできなかった。
「綾香お姉様。絵梨華様と優理様はまだお帰りになりませんの?」
 ティーカップをテーブルに戻し麗が口を開いた。
「ええ、彼女達は最近部活が忙しいらしくて帰りが遅いですから」
「そうですか。では、真琴の紹介は夜になってしまいますわね」
「そうね。先に部屋を案内してあげなさいな。美樹がお掃除をしてくれたようですから」
「美樹が・・・。わかりました。では真琴を案内しますわ」
 すっと立ち上がる麗。あわてて真琴も立ち上がる。
「それではお姉様また後で」
「ええ、いってらっしゃいな」
「真琴行くわよ」
「はっ、はい」
 麗は真琴を伴い屋敷の玄関に向かい歩き出した。

 屋敷の扉を開けると大きな玄関がありその奥に左右から伸びる大きな階段が二階に続いている。
(おおー。リアルバイオハザード!)
真琴は何故か心の中でガッツポーズをした。
「麗、お帰りなさい」
声のしたほうを見ると、メイド服の少女が、バケツとモップを持って階段から降りてきていた。
ショートカットに大きめの目が印象的な少女。青みがかった黒髪に紺と白のメイド服が良くマッチしている。
「美樹、ただいま。そういえば真琴の部屋の掃除してくださったんですって。お礼を言うわ」
「お構いなく。私はただ家事が好きなだけですから、あまり気になさらないで。あら、そちらが真琴さん?」
「はじめまして一之瀬真琴です。以後よろしくお願いします」
「私は、2年A組の木之下美樹。私のほうこそよろしくお願いしますね」
「ところで美樹さま、その格好は・・・?」
 普段みる事のないメイド服を指差し真琴が問い掛ける。
「ああ私、物事は形から入るほうなので、家事のときはこの格好をするようにしているの。メイド服ってなんとなく心が引き締まるでしょ?」
「そ、そうですね」
(そんな物着たことねーよ)
そんな言葉が口から出そうになったがあわてて飲み込み愛想笑いを作った。
「さあさあ、こんなところで立ち話をしても仕方ありませんわ。私が精魂込めてお掃除してきたお部屋を見ていらっしゃいな」
 そう言うと階段を降りてきた。
「私はこれの片付けがありますから失礼しますね」
と掃除道具を見ながら言い、軽く会釈すると右の扉を開け去っていった。
 美樹が去ったのと同時に麗が歩き出した。
 階段を上り、廊下を二回ほど右折すると左右に扉が立ち並ぶ一角に出た。
(バイオじゃなくて大帝国劇場だったか!)
真琴がまた良くわからないことを思い心の中に握りこぶしを作る。
 真琴がそんな事をしているうちに、麗が一番手前の部屋で立ち止まりドアを開けた。
「ここが今日から貴方の部屋よ」
 そう言って真琴を促した。
 部屋に入るとそこは一瞬ホテルと見間違いそうな洋室。
 予想とは違いそれほど少女趣味というわけではない。
「一応タンスの中には一通りの衣類は入ってますけど、来週にでも買い物に行きましょう」
 麗がタンスを開け、そう言った。
「あ、そうだ。真琴そこに座りなさい」
 そう言うといきなり肩を掴み、鏡台の椅子に座らせてしまった。
「さっき会った時から気になっていたのよ」
 そう言うと真琴の髪に櫛を入れていく。鏡には二人の少女が映っている。硬い表情で固まる少女。その髪を梳く優しい笑顔の少女。側から見ると本当に姉妹のようである。
「これが俺なんて・・・」
ボサボサだった髪が整えられ、少女らしさが引き立てられていく。
「これから毎朝、自分で梳かすのよ」
 鏡の少女に優しく諭す麗。
「はい」
 鏡の中の少女に向けられた言葉なのだ。そう思ったら素直に頷いてしまった。
 次の瞬間、ハッと我に返り赤面して俯いてしまった。
 その後すぐに麗は用事があると出て行ってしまった。一人残された真琴は仕方なくベッドに腰をおろした。
(あーあ、これからどうなっちゃうんだろう)
 そんな事を思いながらベッドに倒れこむといきなり睡魔が襲ってきた。
 次の瞬間、真琴は寝息を立てていた。

 真琴が次に目を覚ましたとき、もうすでに6時を回っていた。
窓からきれいな夕焼けが見える。
(ここはどこだ?)
そう思った次の瞬間に現状を思い出した。
下を見下ろせばやはりセーラー服。夢ではないようだ。
なんとなく部屋を出た。周りに人影はない。
入ってきた逆をたどり玄関に向かう。
玄関に戻ってきたとき突然扉が開き小動物並の速さで何かが飛び掛ってきた。
「マッコトー!」
「うわっと」
 支えきれず、尻餅をつく真琴。自分に覆い被さっている人物を見れば、赤毛の髪に褐色の肌の少女がニコニコと真琴を見ている。
「あのー。どちら様でしたっけ?」
 その言葉に少女の瞳の見る見る涙が溜まっていく。
「ひどいヨ。マコト、コーコー最初のトモダチ忘れるナンテ!」
「え?」
 そういえば・・・と真琴は思う。入学式に意気投合した留学生が赤毛で褐色の肌だったっけと。
「お前、もしかしてキャナルか?」
「オウ、そーダヨ。思い出してクレタ?」
「お前も・・・そっ、その誰かの妹に?」
「ウン。マコトと同じ日ニネ。ちょっとボクのほうが早かったんだケド・・・。ああ、ポッドの中でだんだん女の子になってくマコト可愛かったナ」
 遠い目をして語るキャナル。それを見て真琴の顔が赤くなる。
「恥ずかしい事言うな!」
「どうして?恥ずかしい事なんてナイヨ。僕らはおんなじイモートなんだからネ」
 そう言うと頬ずりしそうな勢いで抱きついてきた。
「やっぱりマコトのほうが胸大きいネ。」
 どさくさにまぎれて、キャナルが真琴の胸を触る。
「うわ、何しやがる!」
 そう言いながらも確かにとも思う。だがこの場合、キャナルの胸がなさ過ぎるのだがそれを言うのもどうかと思う。
 ただ、プロポーションに関しては二年後に完全に逆転するのだがそれは別のお話。
 キャナルはそれから少しの間、真琴の上から退こうとせず、はしゃいでいた。
「苦しいー。暴れるな早く退いてくれ〜」
 真琴の願いは聞き入れられそうになかったが、コツンという音と共にキャナルの動きが止まる。
 見上げればキャナルの頭に拳が乗っていた。その拳の先には見慣れぬ少年・・・いやセーラー服を着ているから少女か。なんとも中性的な感じのする少女が立っていた。
「痛いよショウ。いきなり叩くなんてひどいヨ」
「ショウじゃない!お姉様!!何度も言わすな」
 抗議するキャナルにそう言い置いて、少女が真琴のほうを向いた。
「やあ、君が真琴君だね。僕は二年C組の古橋翔。キャナルの姉をしている。以後よろしく頼むよ」
 気さくに握手を求めてきた。
「あ、よろしくお願いします」
 微笑みながら握手に答える真琴。
「うん、笑うと一層可愛いね」
 手を握りながらそんな事を言う翔。
(可愛い?俺が可愛い?)
 今まで言われ慣れなかった言葉に頭がショートしそうになる。
「マコト良いナー。キャナル,ショウにそんなこと言われたことないヨ」
 隣でうらやましそうに見つめるキャナルに気付いて我に返った。
「そんな事よりもお姉様方がお待ちだ。食堂に行こう」
 キャナルの呟きが耳に入らないのか翔は回れ右をして玄関左の扉を開け入っていく。
 二人もそれに続く。
 扉を抜けるとそこはかなり大きな部屋であった。十人は座れそうなテーブルがあり、真っ白なテーブルクロスがかけられている。その上に銀の燭台と一見して高級品だとわかる陶器の皿が数セット。
「ようこそ姫百合寮へ」
真琴があまりの豪華さに唖然としていると当然声をかけられた。
驚いてそちらをみれば、先ほどテラスにいた綾香がおり、その隣に見知らぬ二人。
一人は着物でも似合いそうな美少女。日本人形のような白い肌、腰まで長い髪と切れ長な目が印象的だ。
そしてもう一人は、・・・正直なんでこんなところにお子様が。と真琴は思った。
150cmに満たない体に、エプロンドレス。栗毛色の髪をツインテールにまとめ上げている。太目の眉にきつめな感じの目。概、この少女も美少女であった。
「真琴さんにはさっき会ったけどとりあえず三人そろったからもう一度自己紹介するわね」
 綾香が一歩前に出てそう宣言する。
「私は三年A組の蔵越綾香。ここの寮長をやっています。困った事があったらなんでも言ってね」
 そう言って微笑んだ笑顔はまさに天使のようであった。
 その隣に一歩歩み出てきた少女。
「私は三年B組の大内優理。弓道部に所属しております。以後よろしくお願いします」
 本当に礼儀作法をわきまえていますと言った感じで優雅に自己紹介をした。
 その自己紹介が終わるか終わらないかというところで待ちきれなかったように三人目が飛び出してきた。
「私は久保田絵梨華。演劇部。演劇部ではプリンセスなんて呼ばれてる。今年もまた主役で頑張るから見に来て欲しいな」(ウインク)
 その容姿に違わずいかにも元気なお子様という感じでVサインなど出している。
(あれが最上級生・・・。)
 なんとなく意表を突かれ呆然となる真琴。ふと思いついたように隣を見るとキャナルが目をキラキラさせ「良いナー。僕も演劇部に入ろうかナ」などと呟いている。
(ううー、こいつの思考もわからん)
「貴方達も挨拶なさい」
 そんな言葉が背後から聞こえてきた。
 後ろを振り返れば、トレーナーにジーパンという部屋着に着替えた麗が立っていた。
 その後二人の自己紹介も終わり、食事が始まった。
 かなり豪華な料理だった気がするが真琴はその味を覚えていない。
 幾つか質問された気もするがそれも覚えていない。
 気がつけば自分のあてがわれた部屋に戻り、ベッドに大の字になっていた。
 なんとなく明日から淑女になるための勉強が始まると聞いた気がする。
(淑女ねぇ・・・ん?確かここにいる奴ってみんな元男!?)
 ガバッとベッドから飛び起きた。
(皆、すごく女らしかったけど、最初からそうだったわけじゃないよな。という事はここで暮らしていくうちにあんなふうになって行っちゃうって事か?)
 じわじわと自分がとんでもないところにきたような感覚が迫ってくる。
(はあ、俺これからどうなっちゃうんだろう?)
 ふと、ドレス姿ではにかむ自分の姿が脳裏をよぎった。
「・・・嫌だ!嫌だーーーーー!」
まことの遠吠えと共に今日が昨日に変わっていった。

   続く


あとがき
 どうも!BAFです。今回の話いかがだったでしょう?
 なんとなく判るかもしれませんがこのお話は、某人気少女小説からアイデアをいただいてます。
 ただ実は、あらすじというか解説を見て妄想が爆発したというのが本当のところでして、原作はまだ読んでいません。
 というわけで、もし原作ファンの方いらっしゃいまして気分を害されたら申し訳ございません。
 無知な愚か者と捨て置いていただければ幸いです。
 それ以外の方、もし面白いと思っていただけたらうれしい限りです。
 続きは書けるかどうかわかりませんが今回登場したこのキャラの話が見たいとか言うリクエストには極力答えていきたいと思いますのでどしどしリクエストしてくださいませ。
 それではまた次回作でお会いいたしましょう。

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